神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

アイスランドよ、泣かないで

macky-jun2008-10-26

 外為相場も株式相場も大変なことになっている。24日(金)夕方6:30PM過ぎに一時1ドル90円台に突入した。一日で約7円も円高に動いたことになる。ユーロに至ってはもっと大きく動いており、この日だけで12円以上も円高に動き、1ユーロ113円台になった。この急速な円高は低金利の円からドルやユーロに替え、外債を買っていた国内投資家が世界金融危機で投資を引き揚げていることと、海外投資家も低金利の円を借りて、新興国の高金利通貨で運用する「円キャリートレード」をしてきたが、これを一斉に手じまって、円に替え、借金を返済しているためで、円高が加速しているのである。長年円安が継続してきたのも、ずっと低金利政策を採り続けていたからだと言える。
 その為、輸出関連企業が軒並みダメージを受け、大幅な業績の下方修正が発表されている。輸出依存の日本経済にとってはとっても厳しい状況が待っている。今後、実体経済である製造業への影響が懸念される。但し、マクロ的には円高は悪いことばかりではなく、エネルギーや素材を安く買うことができ、原価低減につながる。また、海外企業をM&Aで安く買うこともでき、悲観ばかりすることもない。たぶん、水面下では動き出した大企業もある筈である。
 世界的には欧州やアジア等の新興国が大変なことになっており、資金流出が加速化している。これらの国には、高金利や成長期待から海外マネーが流入していたが、景気悪化懸念から資金が逃避しだしたのである。欧米投資ファンドが引き揚げ、FX取引の日本個人投資家も資金を引き揚げた。これら新興国はもともと経済規模が小さいので、一気に通貨が値を下げることとなった。この約1か月で、震源地であるドルに対してさえも、南アフリカが約30%、アイスランドが25%、韓国も23%・・・と軒並み値を下げているのだ。各国中央銀行のドル買い支援もあり、ドルは安定しているが、円のみ唯一上昇している。
 この中でも、北欧のアイスランドがまず音をあげた。同国は北海道よりやや広い国土に人口約30万人が暮らす小国で、主力産業が漁業のかつては発展途上国だったが、1980年代以降、規制緩和を進め、急速に”金融立国”を目指していた。インフレ対策として高金利政策をとり、結果的に世界中から投資資金を集めることに成功した。1人当たりGDPは2006年にはルクセンブルグノルウェーに次いで世界第3位だったというから驚く。日本の上をいっていたのだ。いつのまにかランキング上位に浮上しており、15年前にこの国のカントリーレーティングをした小生はにわかには信じられない気持だった。2003年からのわずか4年間で、大手3銀行の総資産は海外マネーのおかげで、9倍に膨張した。その中の1行であるカウプシング銀行は「北欧のゴールドマン・サックス」とまで呼ばれたらしい。だが、その成長ははるかに身の丈を上回っており、一連の金融危機でマネーの流れが一気に逆流した。海外資金が一斉に引き揚げ、各行は資金繰りに行き詰って、政府の管理下におかれた。そして、IMFが同国政府に対し、2000億円の緊急支援をすることが決まった。
 この国の個人はもっと悲惨なことになっている。自国通貨クローナでの金利は10数%であり、低金利の円などの外貨建ローンが普及し、23%もが外貨建だった。中でも低金利の円での借入をする人が多かった。しかし、この1年でクローナは対円で半分に下落。円建てローンを組んでいた個人は1年で借金が2倍に膨れ上がってしまったことになる。グローバル化の恩恵を受けて、07年には国民の幸福度を示すといわれる国連開発計画(UNDP)の人間開発指数で世界第1位に輝いていたというから、何とも皮肉である。国家がグローバル化の中でバブルにまみれたばかりでなく、個人までリスクを軽視し、バブル経済に浸かってしまった。
 タイトルはミュージカル「EVITA」の主題歌「アルゼンチンよ、泣かないで」をもじってみました。アイスランドの人にすれば、本当に泣きたくなるでしょう。北欧の小さな漁業国が勝手に目立ちたい政治家の政策で、バブルを膨らませて、表面上、世界の経済強国の仲間入りだ、世界一幸せな国だ、と言われてもきっとピンとこなかったに違いない。幻を見ていたような思いでしょう。残ったのが大きな借金のみというのも、何とも言えずお気の毒です。本当に童話にでもなりそうな話です。大原さん、絵心生かしてこれをテーマに絵本でも書いてみませんか。