神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

 インベストメントバンクの破綻

macky-jun2008-09-17

  一昨日、150年の歴史を誇る名門インベストメントバンク投資銀行)のリーマン・ブラザーズが破綻し、メリル・リンチのバンカメによる救済合併が発表された。あっと驚く衝撃だった。巷間、両社ともサブプライムローン問題の影響で深い傷を負っているということは言われてきたが、こうした事態が決まるとあらためてショックだった。米証券第5位のベアスターンズが3月に破綻し、今回3位のメリルと4位のリーマンがこのようなことになった。
 ちょうど10年前の日本の姿に酷似していると言われている。97年11月に三洋証券に続いて、大手証券第4位の山一證券が自主廃業を決めた。その翌年には日長銀日債銀が相次いで破綻し、大和証券は98年7月に住友銀行による救済的な資本業務提携を行なった。デジャブ(既視感)のようだ。
 救済されるか否か、外の助けを借りて窮地を救って貰う分かれ目は何か。日経新聞春秋で芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を引用して、リーマンがバンカメに見限られ、メリルリンチに乗り換えたのは、リーマンの「グリード(貪欲)」が原因らしい、と書いている。欲をはった「かん陀多」よろしくリーマンは命綱であった蜘蛛の糸を切られ、地獄に転落した。ハイリターンを求め、世界を席巻してきた米国投資銀行のビジネスモデルが今や負のイメージになっている。少ない資本に多くの借入金で、レバレッジを高めて、ROEの高い投資を行って行く、低金利経済に成り立つビジネスモデルである。ハイレバレッジの仕組みを証券化商品として、不動産やローン、クレジット(信用)、為替、金利等、ありとあらゆるものをデリバティブ商品に組み込んで、ハイリターンを求めていった。世界中に余る富を集めて、錬金術を駆使し、マネーゲームに踊った。言わば、借金をしまくって、博打を行なったということか。
 その結果、不動産価格の下落に端を発し、資産価格が下がり、商品は売れず、在庫が膨らみ、投資銀行のアセットは傷んだ。インセンティブ報酬体系のインベストメントバンカーはリターンを極大化する為、ディール金額を高め、成功すれば高額報酬を得るが、失敗すれば職場を代わればいい、位に考えているのだろう。どうしてもハイレバレッジとなり、リスクが膨らんでいくわけで、投資銀行のバランスシートとしては低資本の歪な構成となってしまう。バンバンに膨らんで、破綻しても誰かが責任を取るわけではない。損をするのはあくまでも銀行と投資家である。そうして、リーマンブラザーズもベアスターンズも弾けてしまった。
 こう書いてきて、僕らのビジネスも投資銀行のビジネスにとても似ていると思った。違うのはVCはストレートな投資であり、レバレッジはかけない。また、数千万円から一億円の年収を取るのも珍しくないインベストメントバンカーと比べ、ベンチャーキャピタリストの報酬は残念ながらそんなに高くない。投資銀行では大学を出て3〜4年すると「アソシエイト」の肩書を貰い、1,200〜1,500万円の平均年収になるという。はたしてそれだけの付加価値を持った人たちなのかと、甚だ疑問に思う。
 今回の事態で、米国では四万人の金融マンが失業するらしい。一部の優秀な人材には再就職先もあるだろうが、それ以外の人々の雇用はわからない。要は濡れ手に粟のビジネスはないということか。リターンが大きいものは当然ながらリスクも高いので永くは続かない。着実に地道にいいビジネスを発掘して、コツコツとやっていくしかないということか。ファンド、レバレッジデリバティブ・・・といった横文字を並べられると何となく、妙に納得させられてしまう、旨い仕組みに違いないと思わせてしまう錯覚に陥り易い。もっとシンプルにリスクの所在とリターンの仕組みを考えてみるべきだというのが、インベストメントバンクの破綻であらためて思ったことである。
 写真はリーマン・ブラザーズ証券の入居していた六本木ヒルズ。それにしても、ライブドア村上ファンドグッドウィル・・・。みんな、市場から退場するとともにこの六本木ヒルズからも去っていった。都市伝説にもなりそうな不吉な運の悪さです。ここは江戸時代毛利家の下屋敷があり、赤穂浪士10人が切腹した場所らしい。土地にまつわる地霊(ゲニウス・ロキ)が良くないのだろうか。