神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

志なき経営者の退場

macky-jun2008-06-27

 今週は投資先の株主総会が多く、連日出席した。全国的にも昨日、今日が山場だったのではないだろうか。決算を機会に企業の健康診断をしてみると、浮き沈みがそれぞれある。かつてベンチャーの雄として持て囃された企業・経営者の退場が今週、ニュースを賑わした。グッドウィルの廃業とNOVAの元社長の逮捕が6/24の同日に決まったのも偶然か。
 グッドウィル二重派遣の法令違反で派遣業免許を取り消され、実質的に事業ができなくなり、廃業に追い込まれた。また、派遣登録社員からせこくピンハネまでしており、訴えられてもいた。弱者である無職の若者を食いものにして、危険な職場にろくすっぽ説明もせず、送りこむ。二重派遣なので送られた方も戸惑うばかりだ。
 折口雅博が創業したグッドウィルは、既にあった介護事業者のコムスンを買収し、子会社とした。しかし、このコムスンにおいても介護報酬の不当請求等の法令違反を犯しており、介護事業からの撤退を決め、他社に対し事業売却をしたのもつい昨年の話である。グッドウィルコムスンでの相次ぐ失敗は、稼げさえすればどんな法令違反も厭わずという折口という経営者の考え方を反映したものであろう。折口は収益・成長至上主義のところがあり、グループ会社を集めた会議では営業成績順に座席を指定し、露骨に競わせ、訓示を垂れていたらしい。
 折口の軽井沢2,500坪の大別荘の特集が2005/12の「Goethe」初回号に載ったことがあった。幻冬舎としては記念すべき男性雑誌初回号に、折口を、しかも彼の大別荘を載せてしまったことを今は悔やんでいることだろう。先見の明のなさを世間に露呈してしまったことになる。高級車を13台も並べ、豪壮な別荘(建物床面積750坪、総額30億円)が偉そうに紹介され、気分を悪くしたのを覚えている。
 介護や労働者派遣という賃金の安い社員で成り立っている会社のトップが、あのような贅沢三昧な暮しをこれみよがしに見せびらかし、それを見た社員はどんな気持ちだっただろうか。そんなトップの下で、真面目に働く気になれただろうか。自分たちのなけなしの給与からピンハネされた金が、彼の別荘や高級車に化けていると知ったらどんなだろうか。
 私は折口雅博に10数年前に会ったことがある。まだ、グッドウィルを創業したばかりの頃だ。小柄で、顔のやけに細長い、顎の尖った一種異様な顔の持ち主だった。彼は子供時代に親が事業で失敗し、経済的に苦労をし、生活費が支給される防衛大学に進学し、日商岩井に入社した。そこでディスコ、お立ち台で有名になったジュリアナブームを作り、時代の風雲児となった。その後、ヴェルファーレを起こすが、いずれも経営から追い出され、憂き目に遭っている。自著では資本の論理で負けたとか、騙されたとか言っているが、結局、今回もコムスングッドウィルのいずれの事業からも追放されることとなった。
 折口はその生いたちのせいなのか、貧乏を裏返しにした金に対する執着なのか、精神的に屈折した、品性の卑しい人物だと言わざるを得ない。著作では偉そうな理屈を述べているが、彼が国の介護保険制度導入を狙って、介護事業に参入してきたのは明らかであるし、一気に1000店以上の多店展開を仕掛け、大赤字をだすと無節操に社員を大リストラし、縮小したり、社員やお客さんは常に翻弄されてきたはずだ。
 折口雅博もNovaの猿橋望も、経営者としての志を間違っていたのだと思う。志や経営理念が正しくない事業は一時は流行っても、長続きしない。グッドウィルグループには「十訓」というものがあって、その最後が「正しくないことをするな、常に正しいほうを選べ」となっていた。いま、こうして振り返ると、大変皮肉な「十訓」となっており、笑ってしまう。