神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

松本泰生著「東京の階段」

macky-jun2008-03-23

 今日はとても暖かい一日だった。来週は外堀沿いの桜が咲き、花見客でごった返すだろう。朝起きて食事もそこそこにカミサンがキムラヤの朝市に行くから、荷物を持ってくれとのことで付き合い、沢山食材を買い込み、汗いっぱいかいて帰ってきた。そして、すぐ日曜の日課いつも通り市ヶ谷のジムまで歩いて行く。今まで習っていたS先生が4月から替ってしまうらしい。男の先生だが、とても柔らかいいい雰囲気を作っておられ、好きな授業でずっと通っていたのに残念だ。春は異動や引っ越し、何かと変化のある季節だ。
 今日も特段何をしたということもなく、極めて平凡な日だった。ジムの帰りに近くの中町図書館で石川光陽の写真集を借り、帰ると、朝市で買ったホタルイカと菜の花でスパゲティを作ってくれたので、昼からビールを飲み、午前中の運動疲れとほろ酔いで昼寝を1時間半程していたら、もう5時。千秋楽相星決戦を見なきゃということでTVをつけるが、今日はあっさり朝青龍の勝ち。白鵬が勝負をあせったなという感じだった。朝青龍は得意満面で手をあげて喜んでいた。横綱の品格ということから何かと問題となるが、こういうヒール役がいて大相撲は面白くなっているのは事実だ。世の中、真面目で品行方正な奴ばかりだとつまらない。
 焼き鳥が食いたくなったので、街に出る。大野屋さんという肉屋が日曜の午後のみ店頭で焼き鳥、焼きとんを炭火で焼いて売っている。これが好きで、月に1回は買いに行く。焼き鳥のことを語らせたら、小生は飲兵衛なのでうるさいんだけど、焼き鳥は美味しい部位が沢山あるけど、やっぱり、皮に尽きるね。最近、鳥好きな娘SAOが皮となんこつにはまってきた。こりゃ、親父似で飲兵衛になるわ。・・・行ってみたら、これまた残念!火が既に落としてあって、20分前に売り切れてしまったとのこと。折からの神楽坂ブームで最近行列がもの凄く長くなっていた。ここの売り上げは倍くらいになったのでは・・と勝手に思っているのだけど。
 焼き鳥で日本酒でNHK篤姫」を観ようと考えていたので、がっかりするが、隣の本屋に入り、前から注目していた松本泰生著「東京の階段」日本文芸社1,680円を購入。著者は早稲田大客員講師をしている41歳。同大学理工学部建築学科在学中から東京都心部の斜面地の景観に関するフィールドワークを行い、その一環として都心部の階段を訪ね歩き12年。都市の階段研究における第一人者である、との解説がある。いや〜、一つのことをコツコツと続けられる人は偉いと思う。小生は飽きっぽい人間なので本当に感心してしまう。地道な蓄積、かけた時間・努力は誰も真似できなくなるから第一人者と呼ばれるようになるのだろう。東京の坂に関する研究者は何人か知っているけど、階段は確かに珍しいね。副題として”都市の「異空間」階段の楽しみ方”とあるけど、俺のような東京・江戸地理歴史ウォッチャーにとっては格好のガイドブックとなりそうだ。東京の階段126ヵ所を丹念に写真と評価(疲労感・景観・スリル・立地)付きで解説されている。地番は細かく書いてあるが、地図はついていないのがむしろいい。自分で探す楽しさを残してくれているのだ。実に読者思いの配慮だと思う。
 神楽坂・市ヶ谷界隈も坂の町なので、何か所も出てくる。美しい階段・歩いて楽しい階段・歴史を感じさせる階段・なくなった階段・変貌した階段・階段四季折々との分類・構成である。最後の章に「東京の地形と階段」という形で、ちゃんと考察があるぞ、しかもかなり勉強してデータもしっかりしてるぞ、おまけに小生の敬愛する陣内秀信氏や横関英一氏の引用もあるぞ、と嬉しくなって読み進むと、エピローグに「本書は2004年に提出した博士論文をベースとしている。」と書いてある。なるほど、早稲田の研究者が一生懸命丹念に積み上げた研究論文で、しかも足を使って書き上げた成果なんだ。さすが〜と再び感心する。この類の本は著者の趣味で感覚的な内容の本が多く、読後に損したなと裏切られることも儘あるが、この本は反対に実証的に考察されたものなので、十分期待に応えてくれそうだ。
 ちなみに、横道に反れるが、小生が良い本を選ぶポイントとして重視しているのは「小さな出版社の出したものであること、売れっ子でない著者による長年の時間をかけた成果であること、加えて男性編集者や担当よりも女性の方がしっかりした仕事がなされていることが多いので好ましいこと」である。この本にしても著者の力作・叡智の塊が1,680円というのは安い。概して本の値段というのは安いと感じている。しかしながら、お金よりも読むための時間を盗られるので、本は慎重に選んでいる。
 写真は同書にも登場する階段ですが、小生が撮った神楽坂らしい路地の兵庫横丁にある小階段です。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4537255455/