神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

上原善広著「日本の路地を旅する」

macky-jun2010-07-01

  「日本の路地を旅する」(上原善広著、文芸春秋)を読む。タイトルの路地とは被差別部落のことである。かつて作家の中上健次がこう呼んだらしい。著者の上原善広は大阪の部落出身であり、自らのルーツを辿る旅でもあったのだろう、北は北海道から佐渡対馬の離島も含め、南は沖縄まで、全国で500カ所以上の路地を13年間かけて旅して廻る。本書はその旅の記録であり、大変な力作ルポである。
 私が被差別部落という存在を知ったのは高校時代だった。歴史の授業で各自フリーテーマを決め、プレゼンを行なう機会があった。その時に私が選んだのが「被差別部落」問題だった。
Wikipediaによれば、”近世起源説では「江戸幕府が大多数の農民を支配するために、宗教的理由で忌避されていた食肉皮革産業や廃棄物処理、風俗業界、刑吏等の賎民を身分支配のため固定化し、代わりに独占権益を与えたことに始まる」としている。ただし「士農工商穢多非人」といった序列付けについては近年否定する説もある。”と書かれてある。
 当時、島崎藤村の「破戒」や類書を読んだ。その後も、被差別部落在日朝鮮人問題に関わる本は機会あるごとに読み続けてきた。ルーツについても、その後の水平社運動や同和問題でもいろいろな諸説があり、難しい問題である。それ故に敢えて、この場所ではテーマに取り上げることを忌避してきた経緯がある。
 上原氏の「日本の路地を旅する」は歴史書・地誌としても面白かった。同氏の教養の深さを窺わせる内容である。吉田松陰高須久子の恋愛の話、関東の穢多非人の統治を任されてきた弾左衛門の話、東京のスラムの話、食肉文化の話、松本清張も「昭和史発掘」の中で採りあげた「北原二等兵の直訴」の話、どれも興味深かった。
 職業と住む地域で、差別化された路地(部落)は、地域によって違いはありながらも、転入転出も進み、若い層ではあまり意識されなくなったとも言われる。しかし、差別は土地ではなく、人の心の中にあるのではないだろうか。