神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

大原悦子「ローマの平日 イタリアの休日」

macky-jun2008-09-20

   不思議な本である。大原悦子著「ローマの平日 イタリアの休日」を読んでいるが、自分自身があたかもローマの街角にいるかのような錯覚にとらわれる。そして何よりおなかがへって、酒が飲みたくなる。ここには観光地は出てこない。イタリアを生活者の立場から生き生きと描いており、登場するのは町の八百屋(トマト屋?)やカフェや料理店やジェラート屋さんだ。地元の料理やお酒の話も満載で楽しい。
 道を間違えたバスの運転手に乗客が指す方向はみんなてんでんバラバラとか、イタリア語がよくわからなった作者が見ず知らずのお婆さんから路上で関西弁のようにまくしたてられ、「ローマは面白い」とスイッチが入ったこと、「ローマは大阪である」という数々の共通点、スリの話を書いた”毎日が「スリ」リング”、イタリア女性がきれいなのは誰もが「女優気分」を持っていること、イタリア男性の魅力は胸板の厚さ・・・。
 文章も気取りのない易しい言葉で書かれているが、33篇のエッセイは内容のある文章で読ませてくれる。面白く、格調の高さを感じる。パリで活躍する小野祐次氏の写真も生き生きとしており、文章との相性もいい。作者が書いた挿絵というか漫画がユーモラスでウィットを感じさせる。こんな文章はいつになったら書けるのだろうか。
 実は作者の大原悦子さんは小生の高校の同級生だ。彼女は津田塾大学国際関係学科に進み、卒業後82年から99年まで朝日新聞の記者だった。ご主人の転勤で2000/7から2年2か月、ローマで過ごした。お母さんに手書きの「ローマ便り」をせっせとFaxで送っていたのが、女性雑誌「ヴァンテーヌ」の連載につながり、その時の体験談をまとめ、この本の出版となった。お金と時間に余裕がなく、行きたくても行けない小生のようなイタリアファンには格好の書物である。日本に居ながらにして、ローマの街並みを歩いてしまおう。
 最近、大原さんは新しい著書を書いた。「フードバンクという挑戦」(岩波書店)という題名であり、まだ食べられるのに大量に廃棄されてしまう食品。それを困っている人たちに届けるフードバンクの活動をルポしたものだ。元新聞記者として、現在の食品流通のゆがみや貧困の社会問題に切り込んでいく彼女らしい書だ。次に読んでみたいと思っている。