神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

「サラの鍵」を観て

macky-jun2012-06-03

  5/31の誕生日に妻からプレゼントして貰った、飯田橋ギンレイホールのシネパスポートを早速使い、「サラの鍵」を観に行った。ギンレイホールは2本立ての名画座館で、2週ごとに上映映画が替わる。このシネパスポートはペアカードで18,900円であり、1年間何回でも観ることが出来る、大変お得なフリーパスポートカードなのだ。
 これまでも地元ギンレイには何度も来たことがあったのだが、いつか暇になったらこのパスポートを買おうなんて考えていた。永遠に暇な時など来ないかもしれないし、いつ死んでしまうかもわからない。妻からは「忙しいからこそパスポートを持つのだ」と言われた。そう、2本立てならよっぽど時間と心に余裕がないと、映画など観に行かない。だけど、いつでも見放題ならば、ちょっと時間ができた時に1本のみ観ることが出来る。大体において2本続けて観る体力は無くなっている。また、2本観てしまうと1本の映画の感動が薄まってしまうのだ。1本1本噛みしめるのがいいのだろう。
 この日に観た「サラの鍵」は2010年のフランス映画だが、日本では昨年末に封切されたばかりだ。パスポート1本目で、いきなり凄い映画に出会ってしまった。かつてパリで起きたユダヤ人迫害事件に隠された少女サラの運命を追いかけて、人生に目覚めていくアメリカ人ジャーナリストのジュリアの物語である。ジュリアとサラの不思議な接点は、夫の祖父母から譲り受けたアパートのかつての住人が、アウシュビッツに送られたユダヤ人家族だったのだ。長女のサラはユダヤ人一斉検挙の朝、弟を納戸に隠し鍵をかけた。
 サラは収容所から逃亡し、弟を助けにあの部屋に向かうが・・・。二人の運命は如何に・・・。ナチス占領下とはいえ、ユダヤ人を迫害した通称「ヴェルディブ事件」を長年公式にフランスは認めなかったが、1995年シラク大統領がスピーチで明らかにし、フランス国民は衝撃を受けたという。戦争という非常事態では人間はどこまでも残酷になれるし、人間性を失ってしまうのか。
 夫との確執を抱えながらも真実を知ることを選んだジュリア、サラとの接点を持ってしまったから、後戻りはできなかった。この映画は登場人物の誰にも加担せず、淡々と描かれている。それ故に圧倒的なリアリティーを持っており、打ちのめされるのだ。