神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

日本電機産業の夕暮れ

macky-jun2012-03-09

  ヤマダ電機のテレビ売り場を覗いた。昨年7月のデジタル放送の切り替え時期も終わり、いま薄型テレビが売れなくなっている。出荷台数は前年同月比の20数%と大幅に沈み込んでいる。それ故にテレビ価格もまた更にグンと安くなっているようだ。例えば、価格コムの比較サイトを見ると、40型液晶テレビでは、SONYの3DBRAVIA KDL-40EX720が48千円である。これは11/3発売時点より▲70%も下落した。また、シャープAQUOS-LC-40E9については36千円台という安さである。かつて液晶のシャープとしてブランド力を誇った同社の商品が、投げ売りにも等しい価格で売られているのである。
 テレビはいくら売っても赤字が拡大するだけだという。消費者にとってはとっても嬉しい状況であるのだが、こと電機会社にとっては大変な事態となっている。先般、日本の電機メーカーが今期の大幅な赤字見通しを発表した。パナソニックが▲7,800億円、ソニーが▲2,200億円、シャープが▲2,900億円のいずれも大幅な赤字となるようだ。一方で韓国のSAMSUNGは1兆1200億円の黒字、米国のAppleは2兆700億円の黒字を前期最終利益で上げているのである。
 ちなみに時価総額で比較すると、Appleが40兆円、SAMSUNGが12.7兆円に対し、日立製作所が一番高いものの2.1兆円、パナソニックが1.8兆円、ソニーが1.7兆円、東芝が1.5兆円、シャープが5,800億円であり、大きく水を開けられている。これに富士通9,190億円、NEC4,300億円を加え、大手電機メーカー7社の合計でも9兆円に過ぎず、SAMSUNGわずか一社に及ばないのである。2000年以降で日本の大手電機メーカーの企業価値は2/3を消失した。
 何故このような事態に陥ってしまったのだろうか?かつて1980年代、日本の電機メーカーは世界を席巻した。垂直統合モデルで部品から製品まで一貫して生産したことが日本の強みであった。自前主義で大規模な工場設備投資を必要とし、横並びで集中的な重複投資を行なった。どこでも同じような商品を出している。このことが商品寿命を短くし、価格のリーダーシップを失い、商品は値崩れを起こした。
 アナログ時代では製造段階での技術的なすり合わせが必要で、垂直統合モデルが有効に機能した。ソニートリニトロン方式のブラウン管を開発し、ブラウン管工場を持たなかったシャープは液晶に逸早く特化した。しかし、デジタル時代ではAppleが工場を持たないように、すり合わせも要らず、部品さえあれば誰でも作れるようになった。結局、日本の電機メーカーはこの30年間変わってこなかったことが敗因となった。変わらなければならないことは誰もが分っていたのに、誰もその変化を起こせなかったのだ。