神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

マイケル・ルイスの「マネー・ボール」

macky-jun2011-09-14

  マイケル・ルイスの「マネー・ボール」が面白い。 連日、夢中になり読んでいる。MLBオークランド・アスレチックスでゼネラル・マネジャーを務め、弱小貧乏球団をプレーオフに常に進出する強い球団に変えた、ビリー・ビーンを中心とした物語だ(ルイスはひとりの男の伝記ではなく、ある考え方の伝記だと言っている)。登場人物は実在の人物で、MLBの有名選手が多々登場するノンフィクション小説である。
 既にこのブログでは[野球]「日米の野球を考える(9)-マネー・ボール」で紹介済みであるが、とても面白いのでまた筆をとっている。訳文とは思えない切れ味のいい滑らかな文章と、機知に富んだユーモア感覚、丹念に考察された章立て・・・。章によって主人公が替わっており、それはビリーだったり、サブのポール・デポデスタだったり、「セイバーメトリクス」のビル・ジェームスだったり、一塁にコンバートされた「ゴロさばき機械」ハッテバーグであったり、不格好なサブマリン投手チャド・ブラッドフォードだったりする。
  小説としてのテクニックもとても巧みである。野球小説なのに、デリバティブ統計学が出てきたり、ジョン・メイナード・ケインズプラトンまで登場する。野球ではなくあたかも投資の物語のようだ。ドラフト会議やトレードの舞台裏が、とてもリアルに描かれており、これはまさに金融トレーディングの世界だ。さぞ緻密な取材をされたことだろう。「金融市場と野球の世界は似ている世界と見ている。どちらも杜撰なデータのせいで投資効率が悪化しやすい。」
 インベストメントバンク出身のマイケル・ルイスの世界は変幻自在だ。浅田次郎の小説を読んだときに小説家になるのは辞めようと思ったが、同じ金融業界出身としてマイケル・ルイスは決定的に「君にはとても書けないよ」と最後通告をしてくれる。