神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

日米の野球を考える(9)-マネー・ボール

macky-jun2011-09-07

  「セイバーメトリクス(SABRmetrics)」とは野球ライターで野球史・野球統計の研究家でもあるビル・ジェームズが1970年代に提唱したもので、アメリカ野球学会(略称SABR)と測定基準(metrics)を組み合わせた造語である。
 野手に必要なのは長打率出塁率。四球と安打は同価値である。バントと盗塁は無意味である等、従来の野球の伝統的価値観を覆す考え方である。ジェームズ自身が本格的に野球をしたことがない、しがない無名のライターだったこともあり、当初は批判的に扱われ、現在でも「野球はデータでなく人間がプレーするもの」という野球哲学を持った人々からは歓迎されていない。
 この理論を実践的に使い、貧乏球団オークランド・アスレチックスを常に優勝を争うチームに劇的に生まれ変わらせた同球団のGMビリー・ビーンについて書かれたのが、「マネー・ボール」(ランダムハウス講談社 2006/3)である。アスレチックスの年棒合計はヤンキースの1/3に過ぎないのに、成績はほぼ互角である。この不思議な現象はGMビリー・ビーンの革新的な考え方による。活躍し年棒も上がった選手を他球団に高く売り、その資金で過小評価されている選手を安く仕入れて、優勝を争える戦力に仕上げる。「セイバーメトリクス」の考え方で、埋れた人材を見事に発掘し、奇跡を起こしたのだ。 
 ビーンの魅力的な哲学が、切れ味のいい文体で、伝記のように書かれている。メッツでプレーをしていたが、芽が出なかった元大リーガーのビーンが、ハーバード大卒の天才肌の理論家ポール・デポデスタを片腕に、独特の哲学で球団を改革する。「出塁率の高い選手をとる」「ドラフトでは高校生はとらない」といったことを徹底していく。そして、とても費用対効果の高いチームを作り上げる。著者のマイケル・ルイスは元投資銀行にいたバンカーであり、従来の野球モノの本とは一味違う、スポーツビジネスの本として読むと面白いだろう。
 「マネー・ボール」については、理論家の元大リーガー長谷川滋利の本「素晴らしき日本野球」(新潮社 2007/4)にも面白いことが書かれている。ちなみに私はアマゾンで取り寄せ、早速読み始めたのだが、たちまち魅力的な主人公と文章に引き込まれた。先ほどネット検索していたら、この11月11日からブラピ主演で映画公開されると知り、驚いたのだった。何たる偶然!またまた流行りに乗ってしまいました。 http://www.moneyball.jp/ ←映画「マネーボール」の公式サイトです。