神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

日米の野球を考える(7)-不都合な真実

macky-jun2011-09-03

  2001年はMLBにとって歴史的な日であった。100年を超す長い歴史の中で、球団経営の実態が初めて明るみに出た。「2002年から2球団を削減して28球団とする」ということがオーナー会議で決まった。その参考資料として、アラン・セリグコミッショナーからMLB30球団の予想財務報告書が提出された。
 「赤字決算となるのは30球団中25球団、全球団の赤字額合計は519百万$に達する。累積赤字額は30億$以上にのぼる」「収入格差と選手年棒の開きは広がる一方で、経済システムが破綻している」と資料を基に窮状を訴えた。
 「球団経営は本当に苦しいのか」と公的な場で指摘したのが、ボルカー元FRB議長だった。2001年セリグ報告には各方面から猜疑の眼差しが向けられた。米経済誌「フォーブス」によれば「営業利益は20球団が黒字で10球団が赤字」セリグ報告とは大きく異なったものとなっている。
 要はいくつかの決算操作が為されている可能性が高いということである。第一には、「減価償却」の存在だ。「球団の買収費用の半分を選手契約によるものと考え、最長5年での償却が認められている点だ。例えば500億円で球団を買収したら、半額の250億円を5年間に分け、毎年50億円の収益圧縮が出来るのである。
 第二には、「関係会社間の取引」を各球団は過小評価し、収入を少なく見せている。例えばヤンキースは同じオーナーのスタインブレナーの所有する「ヤンキーネッツ」という放送局を持つが、放映権収入を意図的に低く設定することで、「ヤンキーネッツ」に収益移転をすることが可能である。
 第三には、「借入金」のトリックだ。球団の買収に際して、オーナー自らが貸し手となったものまで含まれていた。金融費用分だけ利益圧縮が可能であり、実態以上に財務内容を悪く見せているのである。
 何故、オーナーたちは「赤字経営」を装うのか?一つは、選手との年棒交渉を有利にする為の材料。二つ目は新球場建設など地方公共体から支援をして貰う為。三つ目はチケット料金などの値上げ材料とする為、だと言われている。それでもMLB球団を買いたい者がいくらでもいるのは、球団が優良な投資対象であり、オーナーたちの錬金術になるからだ。