神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

「本郷館」の最期に

macky-jun2011-08-02

  本郷に行った折に、ニュースで読んだ築106年の木造3階建て下宿「本郷館」を訪ねてみた。なんでもこの8/1から解体が始まるとのことだったが、まだ写真のように現存していました。日本最古の木造3階建て下宿であり、作家林芙美子や著名人物も住んでいたことのある、歴史的価値のある建物のようだ。
 明治中頃、東京の二大下宿屋街、神田区本郷区には合わせて700軒にも及ぶ下宿屋があり、全国からやって来た書生であふれていたらしい。そんななかで、明治38年(1905年)本郷館が建てられた。その後、関東大震災東京大空襲にも耐え忍んだ建物は、大正5年頃の写真を見ても、今とあまり変わっていない。
 76室4畳-10畳、1450平米の建物はかなり大規模だ。オーナーは転々としたようだが、当初は地方出身の学生を対象に賄い付きの下宿屋として出発した。東京女子高等師範(現御茶ノ水女子大)の寄宿舎の時期を経て、戦中・戦後の食糧難の時代に至り賄いなしの自炊アパートになった。
 5年前に老朽化して危険だとのことで、オーナーが取り壊しを決めたが、住人が反対し、立ち退き訴訟に発展していた。結局、危険であるとの判決で住人側が敗訴。今回の解体が決まった。
 今にも雨が降ってきそうな天気に、出会った「本郷館」は静かな佇まいを示していた。100年超の長い時間の中で、ここに住んでいた住人達はいまごろどうしているのだろうか。地方から希望と夢いっぱいに集まった、古(いにしえ)の学生たちの元気な声が聞こえてくるような気がした。不思議な時空間の流れが漂っていた。