神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

MBOブームに思う(2)-何故非上場化をするのか

macky-jun2011-05-24

  昨日、MBOによって上場廃止する企業が増えているという話を書いた。今日はそもそもその上場(IPO)の意義について考えてみたい。
 IPOにはメリットとデメリットがある。デメリットとなるのはディスクロージャーへの対応・事務負担増加などのコスト増、TOB対策、株主総会対応などがあるが主にはコスト増の問題であろう。特にJ−SOX対応、今後はIFRS(国際会計基準)導入コストが莫大にかかることになり、上場維持コストが重荷になっている。これらが非上場化を促す要因になっているとされる。
 それではIPOの意義となっていたメリットを見直してみよう。IPOメリットとしては、(1)資金調達の多様化、(2)優秀な人材の確保、(3)企業信用力の向上、(4)創業者利潤の実現、(5)従業員の士気向上・資産形成、(6)知名度の向上などが挙げられる。
 (1)については通常エクイティファイナンスは会社の成長する証しとして、株価は上昇した。しかしながら最近では増資による希薄化や需給関係の悪化から、株価が崩れる企業が増えている。ファイナンスは市場では「買い」ではなく、「売り」となっていることから、資金調達にはマイナス面が強い。
 (2)については就職市場の悪化から、苦労せずとも優秀な人材の確保は可能である。(3)については上場会社であろうと不祥事や倒産とは無縁ではなく、必ずしも説得力を持たなくなっている。(4)についてはIPOに拘らずとも、M&Aや企業譲渡などで利潤実現は可能である。(5)について上場後の株価は順調に伸びる会社は少なく、必ずしも資産形成には資さない(私も従業員持ち株ではとても痛い目に遭っています)。
 (6)の知名度向上はいったんIPOして目的が達成できれば十分となり、非上場化を考えることになる。こうして具体的に考えていくと、現在の社会・経済の環境の下ではIPOはメリット感が薄く、デメリットの方が大きい。MBOをして上場廃止を考える経営者が多いのも、しょうがないのかなと思えてしまうのである。