神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

MBOブームに思う

macky-jun2011-05-23

 MBO(経営陣による自社買収)によって上場廃止する企業が増えている。最近でもCCC(TSUTAYAを展開するCD/DVDレンタル)、アートコーポレーション幻冬舎といった有名銘柄が市場を去った。
 MBOは欧米では1980年代から活用されていたが、日本では2000年になって徐々に普及し、2005年のアパレル大手ワールドによる非上場化がMBOブームの先駆けとなった。以降、MBOは年10〜15社のペースで進行し、05年以降では既に64社が去っている。
 経営の自由度を高める為というのが、各社の上場廃止理由として述べられることが多いが、上場維持コスト負担をなくすことも目的とされている。幻冬舎の見城社長は「出版不況の中で業界の構造変化の対応に、短期的な利益を求める少数株主を気にしない環境を求めて、市場からの退出を決めた」と語っており、CCCの増田社長も同様な理由だ。
 MBO非上場化企業の69%が経営者または大株主が創業者系というデータがある。オーナー経営者は時代の変化への嗅覚が鋭く、次の成長に向け上場をやめてまで改革に取り組む。成長の頭打ちに耐えられず、一度リセットし、過去の成功体験に回帰したいのではないかとも見える。
 2008年秋のリーマンショック前は投資ファンドが主導したが、足元では金融機関がMBOファイナンスには積極的である。リスクが伴う分、銀行にとっては利鞘が高いのである。
 MBOに問題がないわけではない。MBOでの買い取り価格が低く、既存株主が損失を被るケースがある。レックスHDのケースでは買い取り価格を巡って株主からの訴訟問題に発展した。都合のいいときに上場し、悪くなると上場をやめてしまうのは投資家軽視であり、日本の証券市場は益々見放されてしまうのではないだろうか。上場支援をしてきたベンチャーキャピタリストの立場からは複雑な心境である。「誰のためのMBOか」「企業は誰のものか」という根源的な問いに突き当たる。