神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

東電問題(1)天災か人災か

macky-jun2011-04-07

 福島原発事故の対応で、当初は日本に同情的だった世界の反応が厳しくなってきた。日本のみならず世界を放射能汚染リスクにさらし、特に汚染水の海洋投棄が充分な説明が為されず、不意打ちで行なわれたことに、世界全体から顰蹙(ひんしゅく)をかっているようだ。日本政府と東京電力への風当たりが厳しくなっている。
 東京電力の問題について論じてみたい。問題は東電の当事者意識のなさから来ている。そして、このような無責任会社を生んでしまった日本国への不信が高まっている。今次原発事故は不可抗力の天災という側面よりも、東電の怠慢(不作為の罪)から発生した人災である。そもそも、何故あんな危険な場所に原発など建設してしまったのか。設置場所の選定のミスであり、発電所の建設認可や電力料金の設定が全て権限を国に握られていることから、当事者意識が無くなっているのだろう。
 一番の責任者である筈の清水社長は病気を理由に引きこもってしまい、姿を現さなくなって久しい。いったいどういう神経の持ち主であろうか。清水社長が社長に就任したのは2008/6である。08/3期当期利益▲1500億円、09/3期▲845億円の大赤字を計上した東電は、危機的な状況からコストカッターの役割として清水社長を抜擢する。新潟中越地震で07/7に東電柏崎刈羽原発が被災し、その復旧費用に約6000億円かかった。更にBRICsの石油需要急増で石油価格が急騰したのがWパンチとなり、2期連続の大幅赤字を余儀なくされたのである。しかし、清水は猛烈なコストダウンを断行し、10/3期に1300億円の黒字転換を果たし、業績の急回復を実現した。11/3期も無事黒字決算を迎える直前まで来ていた。何もなければ・・・そして、あの3・11を迎えることになる。
 本来、東電は公益企業である。世界最大の民間電力会社であり、何もなければ極めて安定度の高い企業と見做されてきた。しかし、実態は極めて危険度の高い原発保有するというハイリスクの企業だった。その中で福島原発は建築後既に40年も経過した老朽原発であった。柏崎刈羽の教訓をもとに耐震安全性を強化しなければならなかった。当然、清水ら経営陣はこの老朽原発の耐震安全性不備を認識していた筈である。しかし、コストダウンか安全性優先かの選択で、リスクに目をつぶり、コストダウンを優先してしまった。高収益を達成し、己の功績を何としても上げたかったのであろう。目の前には将来貰えるであろう勲章でもぶら下がっていたのだろうか。 
 何もなければ清水社長は名経営者として、表面上は称賛されたに違いない。ところが天国から地獄への真っ逆さまへの転落である。エリート人生を歩んできた清水にとって、これだけの逆風は耐えられなかったに違いない。それ故にあまりものショックで人前に出てこれなくなった。今頃は鬱状態にでもなっているのだろうか。何とも情けない話である。