神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

清水佑三「20代で読むヒト学ココロ学」

macky-jun2011-01-19

   あることをきっかけに、恩人でもある故清水佑三氏の本を再読している。先般の最終講義で、清水氏に触れたこと、彼の著作について友人との話題に上ったこと、からまた読み直そうと思った。改めて読み返してみると、彼の本は叡智の宝庫であり、感銘することしきりである。なかなかここまでの文章は書けないだろう。
 まず読み返したのは、PHP文庫「20代で読むヒト学ココロ学」である。この本は著者の清水さんから初めて頂いた本であり、ちょうどその頃、出版されたばかりのエッセイ処女作であった。「人間研究」をライフワークとしていた著者の、優しい毒に満ちた人間観察学である。「人間の取扱いに慣れていない若者たちの心を癒す”生きるためのヒント”」と帯には書かれている。
 はっきり言って、題名で損をしていると思う。この本の内容は深く、中高年やどんな年代が読んでも充分為になる本である。題名から、若者向きの本と思われてしまい、読者が限定されてしまうのがとても残念である。実は文庫化は95/5であったが、92/11に「”嘘つき”のススメ」というタイトルで前に出版されていた。このタイトルもまた捻り過ぎかと思われる。
 彼は人事コンサル会社の社長で、人の性格・職業適性テスト開発にも永らく従事してきた、まさに人間に関わる研究を生業としてきた人だ。人間心理とそのデータベースを元にした応用統計学を組み合わせたPsychometricsなる学問ジャンルの研究者でもある。
 その著者が血液型人間学の信奉者であったり、占い好きであったりする。古今東西の文学・哲学・歴史や音楽が登場し、深い知性を感じさせるが、一方で「週刊新潮」の「黒い報告書」という男女の痴情怨恨話の熱心な読者でもあり、彼の幅の広さ・懐の深さに感服させられる。
 清水氏はその後何冊も著作を書かれたが、この本が彼が若い頃から考えてこられたことの集大成になっているように思う。是非、ご一読をお薦めしたい。