神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

 消費者金融業者の破綻に思う

macky-jun2010-10-03

  9/28に消費者金融大手の武富士会社更生法の適用申請を行なった。過払い利息返還の負担に耐えきれず、経営が行き詰まり、DIP型の会社更生を目指すことになった。通常の会社更生は経営陣が総退陣するが、現経営陣が一部残留するのをDIP型と呼んでいる。
 武富士を始めとした消費者金融業者が厳しくなったのには二つの事情がある。何しろ貸金業者はこの10年で3万社から足元では3千社に9割減となっている。一つには「過払い金返還請求」の問題だ。「過払い金」「過払い利息」とは、過去に出資法の上限金利(年29.2%)と、利息制限法の上限金利(年20〜15%)との間の「グレーゾーン金利」で利用者から受け取った利息のことだ。2006/1の最高裁判決で違法と認定され、各社は莫大な利息の返還義務を負うことになった。要は顧客から高利貸しを貪って、儲けすぎていたということだ。
 もう一つは今年の6月から貸金業者からの借り入れ総額を年収1/3以下に制限する「総量規制」が施行され、新規融資が激減したことだ。個人が借り過ぎで、自己破産に陥らないように制限を設けたものだ。
 かつて消費者金融業者(=サラ金)がグレーゾーン金利での貸し出しと、独自の債権回収ノウハウ(?)で、我が世の春を謳歌した。特に巨額な不良債権処理に苦しむ大手銀行グループを尻目に、90年代に急成長を遂げて、高収益を上げた。武富士の創業者武井氏が高額納税者番付の常連になっていたのはその頃だ。
 我々VC業界の大手J社は逸早く、この業界に着目し、業界分析を行なった。その結果、絨毯爆撃のようにこの業界に集中的に投資を行ない、軒並み公開を果たし、彼らに莫大なキャピタルゲインをもたらした。この収益がJ社の財務基盤になったと聞いたことがある。
 大手銀行も消費者金融会社の高収益に着目し、リテール(個人向け)戦略の柱と位置付け、三菱UFJFGはアコムを、三井住友FGはプロミスを、其々2004年に傘下に入れた。その後の2006年の最高裁判決や今回の総量規制は予想外だったのだろうか。こうした経営判断が大手メガバンクグループの経営の足を引っ張っている。
 日本では毎年3万人もの自殺者がいるという。98年に2万人台から一気に増えて、その後10年間まったく減ってはおらず、昨年は更に増えている。サラ金業者からの取り立てを苦にして自殺した人も多いと聞く。だから、直接的な悪となっている要因を社会から取り除いてしまおうというのは、極めて単純な発想であるがわかりやすい。
 しかし、サラ金業者に頼ってしまったのはあくまでも個人の責任である。人間の欲望というのはどの時代にあっても変わらないから、金詰りになる人は常に発生する。サラ金業者が淘汰され、その人たちは一体どこに金を借りに行くのだろうか?闇金業者が蔓延ることになるのだろうか。サラ金が無ければ借りれないので、倹(つま)しい生活をするのだろうか。ならばサラ金なんて必要悪だ。無くなっても誰も困らないのだろう。
 金貸しの世界は常にリスクとリターンに応じた金利体系が築かれてきた。どこまでの高金利を違法にするかは議論があり、それについては既に最高裁が結論をつけた。ペイオフで問題になった日本振興銀行石原都知事の失政の一つである新銀行東京。これらは商工ローン等が破たんした後の、一般銀行とサラ金との間となるミドルリスクミドルリターンを法人向けに目指したビジネスモデルであった。しかし、このビジネスモデルも破綻した。
 大手銀行では、ここ10年で取引先の財務格付けに応じた金利体型を適用するように変わってきた。しかし、残念ながらわが国にはこの金融の基本原則となるリスクとリターンに応じた金利体系がいまだ根付いていないような気がする。
 写真はCMで有名だった武富士ダンサーズ。会社が万歳してしまったのにこの写真も万歳・・・笑えるね!