神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

日本のポジショニングは如何に

macky-jun2010-07-13

 日本経済新聞社主催の大手町日経ホールで行なわれたフォーラムに出席した。「グループ経営戦略・ガバナンス強化・上場会社法制」をテーマとした内容だ。基調講演は一橋大学大学院商学研究科の伊藤邦雄教授の「グループ企業価値の向上とガバナンスの課題」であった。馴染みある伊藤教授の講演ということもあり、関心をもって聴いた。
 先ずは「日本企業の国際競争力からみた立ち位置を直視する」というタイトルで、10枚程のPower Pointの表が並び、問題提起されたのだが、あまりにも今の日本のポジションが情けなく、衝撃を受けたのだった。例えば、「国際ランキングの推移」という表が真っ先に登場するが、IMDの国際競争力ランキングでは1991年に1位であった日本は96年までは4位に留まっていたものの、以降急低下し、現在は27位である。1人当たりGDPでは1991年に8位であったが、96年の4位が最高で、現在は17位である。世界GDPシェアでは96年の18%を最高に、以降下がり続け、現在は8.7%である。日本の国力が衰えているのが、言い訳の仕様もなくわかるのである。
 証券市場の指標もガッカリするものばかりである。サブプライム以降の日本企業の株価の回復は他国に比べ、遅れている。時価総額での市場規模比較でも、米国に次ぐ第2位の市場規模を何とかキープしているものの、近年は中国、英国、香港に肉薄されている。外国企業の上場数も一貫して低迷しており、ロンドン、シンガポールが躍進している。
 外国企業の対日関心度調査(経産省2009,2007FY)はもっとショッキングだった。2007FYには日本はアジア諸国6カ国の中で、アジア地域統括拠点、R&D拠点として1位に選ばれていたのだが、わずか2年後の調査である2009FYには、同部門で4位、2位に落ちている(1位はいずれも中国)。アジア地域統括拠点としてはシンガポール、香港にも負けており、インドと同点だった。
 とにかく、ここ2年くらいで、世界の中における日本の地位低下が著しいのではないだろうか。そして、私を含め多くの日本人はその事実に対する自覚がないのではないだろうか。
 日本企業はあらゆる業種でROA等の収益性比較で外国企業に劣っている。特筆すべきは、日本の代表的産業であるエレクトロニクス業界である。企業価値時価総額)を比較すると、日本の上位3社(パナソニックソニー東芝)の合計7兆2000億円よりも、サムスン電子(7兆9000億円)1社の方が多いのだ。日本が強いと思い込んでいた市場で負けている。例えば、薄型テレビ市場では日本企業の世界シェアは2003年76.1%→2008年32.6%、太陽電池は46.7%→6.8%と、大きく外国企業に奪われているのだ。
 フォーラムの本題であった「グループ経営」には全く入れず、伊藤教授の”つかみ”の部分に魅了され、その紹介で終わってしまった。今日、気になったのは度々、伊藤教授が「本邦初公開」と言われていた内容(図表)であった。おそらく、ゼミの学生に作業をさせたデータ結果に、新しい面白さを発見されたのであろう。まさに学者冥利に尽きる楽しさで、羨ましいなという気持ちを覚えたのだった。