金融再生参謀の逮捕
数年前に羽振りを効かせたMHKの一人、日本振興銀行創設者の木村剛が逮捕された。Mとは村上ファンドの村上世彰、Hとはライブドアの堀江、Kが木村剛である。既に先の二人は退場しており、残ったKが注目されていた。金融庁の検査妨害との容疑である。業務上の不都合なメールを同氏の命令で大量に削除していたらしい。
木村前会長は小泉政権の金融大臣であった竹中平蔵に可愛がられ、金融庁顧問として活躍した。2002年「金融再生プログラム」「金融庁の検査マニュアル」策定に関わった。2003年8月に中小企業向けの融資を専業とする日本振興銀行を華々しく、立ち上げた。その頃は大手銀行の貸し渋りや貸しはがしに批判が集中していた時期であり、中小企業を助け、日本経済を活性化させるというお題目の下で、同行は設立された。
石原慎太郎都知事が始めた新銀行東京も、同じような構想でできた銀行だ。しかし、これら中小企業にも大手行が積極的に融資をするようになり、両行はほどなく行き詰った。近年、都議会から批判が集中していた首都銀行東京に対し、日本振興銀行は黒字化を果たし、業績も好調であると言われてきた。片一方が駄目なのに、何故だろう?と思っていたところだった。
実態はSFCG(旧商工ファンド)の債権買い取りビジネスに傾斜したり、「大口融資規制」逃れの迂回融資や「中小企業振興ネットワーク」という加盟組織内で、融資を還流させ同行の増資に充てさせたりしていた。「金融庁の検査マニュアル」の策定者として、金融庁検査の裏まで精通した木村ならではの、やりたい放題である。おまけに検査中に同行株を高値で3億円も売り抜いたというから呆れてしまう。頭が切れ過ぎると、いろいろと工作のアイディアが浮かぶようだ。このあと捜査が進み、叩けばいっぱい埃が出てきそうである。木村剛が一番得意な筈の金融庁検査で躓いた。世の中、皮肉なものである。