神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

「差別と日本人」

macky-jun2010-07-07

  昨晩も睡魔に勝てず、10時過ぎには寝てしまったので、朝早く起きて書いている。Wカップは絶好調ドイツにスペインが1−0で勝ち、初の決勝進出を決めたようだ。オランダとスペインでの決勝戦、どちらが勝っても初優勝となる。起きた時には既に試合は終わり、ダイジェスト版をやっていた。
 野中広務辛淑玉の共著「差別と日本人」を読了。昨年のベストセラーであるが、1年前に買っていたが、積読になっていた。先般「日本の路地を旅する」を読んだのをきっかけに、手に取ってみた。野中は2003年に政界を引退した、元自民党の実力者。京都府園部町被差別部落出身であることをオープンにしている。辛は在日朝鮮人として、人権問題等でメディアに登場することも多い、キツイ、ストレートなトークが売り物の人材育成コンサルタント
 本書はまえがきとあとがき以外は、二人の対談集であり、途中、解説文を辛が書いている。その解説文のウェートが高いから、辛の著作に野中が参加したという構図が正しいのかもしれない。野中というパワーを持った政治家の原動力が部落出身であるという点にあったように思った。彼はいろいろな局面で弱者救済の政策を打ち出している。終始、冷静沈着な野中であるが、自分の出自や家族のことも含め、かなり踏み込んでいる。この野中に、かなり偏見と独断思考の強い辛がズバズバとストレートに質問を投げかけていく。本書はこの異色な個性二人のバトルとして読むと面白い。尤も百戦錬磨で、終始冷静沈着で誠実な野中は、辛の挑発には乗らず、うまくいなし、流していく。
 差別というのは被差別部落や在日以外にも、沖縄やアイヌハンセン病患者などいろいろとある。世界中にも至るところにあるのだ。黒人やユダヤ人、米国でのアイルランド系・イタリア系移民差別、ネイティブアメリカンインディオ差別、ドイツでのトルコ系・ユーゴスラビア系移民差別・・・・。マジョリティーとは異なるマイノリティーを差別してしまうのは人間の習性だろうか。
 この本は結局何を目指したのか、よくわからず終わり、読後のスッキリ感はなかった。この問題特有の何だかわり切れない、後味の悪さが残った。しかし、野中を通しての政治の裏面史として読むのもいいし、実在の人物が多数登場してくるのも面白い。辛の思考や意見にはついていけない所もあるが、知識として得るものは多かった。まずは満足がいく本ではないだろうか。