神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

ユニクロ研究(1)

macky-jun2010-04-19

  娘の内定が決まってからというものの、ユニクロ研究に明け暮れている。我ながら、つくづく馬鹿な親だと思う。馬鹿だと言っている仲間の顔が浮かぶようだ。だけど、これがとっても面白いのだ。先日は娘の貰ってきた2009/8期のファーストリテイリング(以下、ファストリ)のアニュアルレポートを熟読してしまった。仕事柄、もっと小振りの未公開企業の決算報告書を読むことは多いのだが、上場大企業のアニュアルレポートを読むことはあまり無い。
 読んでいて面白いアニュアルレポートというのはあまりない。だけど、この会社の場合は展開がとてもダイナミックであり、随所に面白さがあるし、柳井正という経営者の凄さがよくわかるのである。
 ファストリの連結売上高は1999年1,110億円→2009年6,850億円と6倍に拡大。営業損益は同様に143億円→1,086億円、当期損益は68億円→498億円に大きく拡大。しかし、業績は順調に増収増益基調で拡大してきた訳ではなかった。フリースブームで売上高は1999年1,110億円→2000年2,290億円→2001年4,186億円と倍々ゲームで増えていったが、それ以降、2002年3,442億円→3,098億円と2期連続で減収となり、2005年まで売上・収益とも略横這いで、かつての勢いを失うのである。
 2002/11に柳井は若い玉塚に代表取締役社長の座をいったん譲るが、2005年にまた社長に復帰してから快進撃が始まる。国内外の他社アパレル会社をM&Aで次々と傘下に治め、一度は失敗した英国への再進出、NY、パリ、中国での展開を加速する。業容拡大ばかりでなく、東レと戦略的業務提携を結び、ヒートテックの開発等、高機能製品開発にも取り組み、世界的なデザイナーであるジル・サンダーとコラボするのである。かつての安いけど、ダサいイメージを完全に払拭した。
 ユニクロは薄利多売のビジネスだろうというイメージが強いが、実は全く正反対である。利益率がとても高いのだ。ファストリの粗利は約50%、営業利益は15.9%もある。国内ユニクロ事業では営業利益は20%を超えるのである。SPA(企画・製造・小売販売を1社で一貫して行うビジネスモデル)の特性をうまく生かし、お客さんのトレンドを機敏に掴み、売れ行きを見て、製造・在庫調整を適宜行なうので、利益率が高くなる。また、高機能製品が利益率を上げている。確かにヒートテックは1,500円もして決して安くはない。
 ファストリは企業規模を10年で10倍にすることを目指しており、その過程で世界一を達成するという。世界一と容易く言う人は多いが、柳井正ファストリの場合は、それを実現する確度も高いのではないかとマジで思えてくる。誠に凄いことである。