神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

VCの投資判断のあるべき姿

macky-jun2010-04-07

 ニコラス・タレブの本を読んでいて、ベンチャー・キャピタルに対して言っている気のきいたフレーズがあるので、御紹介しよう。「こういう賭けをちょっとずつたくさんするのが重要だ。目立つ黒い白鳥一羽に気をとられてはいけない。考えられる限りたくさんのことに、それぞれ少しずつ賭けるのだ。ベンチャー・キャピタルでさえ、自分たちにとって「筋が通る」一握りのお話に賭けるなんてことをやって講釈の誤りを犯している。そういう連中はもっと賭けの数を増やすべきなのだ。どこかのベンチャー・キャピタルが儲かっているとしたら、それは彼らの頭の中にあるお話のおかげではなくて、彼らが予期せぬ稀な事象にさらされていたからだ。」
 将来のことは誰にもわからない。ありえそうな社会の中期的な姿は、ある程度推測がつくかもしれない。だけど、個別企業のことになると、どんな事象が起こるか、それはまったく想像がつかないものだ。社長個人の体調が悪くなるかもしれない。不祥事や事故が発生するかもしれない。予想もしていなかった海外のライバルが現れるかもしれない。
 自分なりの「筋が通る」講釈を考えても、それは自分を納得させるだけの自己満足であって、正しく予測が出来たわけではない。だから、少しの瑕疵には目をつぶり、長所がうまく伸びてくれるのを祈りつつ、恐々と少しずつリスクを張り、多くの先に投資していくのが、ひいては大成功案件を生み出すことになるかもしれないのだ。
 だから、一概に審査を厳しくして、瑕疵や短所を見つけ出して、蹴っていくばかりでは駄目だ。飲めるリスクの許容範囲を拡げなければならない。リスクを取らないところに失敗は少ないだろうが、決して成功は微笑まないものだと思っている。銀行ビジネスとベンチャーキャピタルビジネスの違いを学ぶことから入るのが先決であろう。