神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

 「村上龍」さん考

macky-jun2010-01-25

  昨日買った渡辺香津美「Kylyn」に触発されて、今日は学生時代に買ったYMOのアナログレコードを取り出して、聴いているのだ。テクノサウンドは最近の口パクの女の子3人組「Perfume」でも復活しているらしいけど、日本のテクノポップの元祖はやっぱりYMOYellow Magic Orchestra)だ。YAMAHA GT-2000に針を落とすと、青春時代に聴いた響きが蘇える。当時はCDがまだ普及しておらず、アナログレコード盤でしか音楽を聴かなかった。だから、耳の記憶にあるのはアナログの音である。やはり、その時代に走っていた人として、村上龍さんを思い出した。
 村上龍さんの「無趣味のすすめ」を読んでいる。村上龍さんは「限りなく透明に近いブルー」で若くして、芥川賞を受賞し、注目を集めた我々の学生時代の作家である。最初、私は彼の小説に頽廃的な匂いを感じ、好きではなかった。しかし、時の流れとともに、龍さんも私も変わり、見逃せない人物になりつつある。彼は「カンブリア宮殿」の司会をやって、社会や経済を代表する人物との対談をこなしている。最近の著作は、特に経済に対して鋭い論評を行っている。それも、経済学者や評論家のそれとは違う、素人や一般大衆寄りに立った、とても解り易い文章である。
 以前、「13歳のハローワーク」という本を書いた。この本は龍さんならではの強烈なメッセージがあった。「いい学校を出て、いい会社に入れば安心、という時代は終わりました。好きで好きでしょうがないことを職業として考えてみませんか?」と帯に書いてある。「OOが好き」という索引で、自然科学、アートと表現、スポーツと遊び、旅と外国、生活と社会という大項目の分類の後に、更に細分化した「好き」な内容によって職業選択が分かれていく。例えば、算数・数学が好きとなると、金融業界で働くというのが一番に来る。笑ってしまうのは、何も好きなことがないとがっかりした子のための特別編としてあるのが、「戦争が好き」「エッチなことが好き」「ケンカが好き」という項目である。「エッチなことが好き」な子のためには、風俗で働くことを切々と問題点を挙げて戒め、ある意味でそのような子は、人間関係やコミュニケーションといったことに敏感な子が多いとまとめる。そして、精神科医臨床心理士、作家、芸術家、職人、デザイナー営業、医師をそのような子のための適性職業として紹介している。
 実に面倒見のいい本である。この本は子供ばかりでなく、大人に読ませたいと思って書いたのが随所に感じられるのだ。我が家でも、子供たちよりもこれを一番熱心に読んだのはこの私だった。
 「趣味は老人のものだ。・・趣味の世界には、自分を脅かすものがない代わりに、人生を揺るがすような出会いも発見もない。・・真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。つまり、それらはわたしたちの「仕事」の中にしかない。」「無趣味のすすめ」の冒頭の同名エッセイの抜粋です。龍さんはとっても硬派です。現代の社会・経済に対して、アンティテーゼを投げかけるばかりでなく、彼なりのソリューションを出すところが、とても男気のある人だと今では尊敬している。