神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

今年のIPO市場

macky-jun2009-11-13

 外に出ると予報通り雨が降っていた。日常、いつも折り畳み傘を鞄の中に忍ばせているので、濡れることはあまりない。今日は午後2時からあずさ監査法人の株式上場セミナーが、地元神楽坂であった。会場となった家の光会館からは逢坂を登ると、家まで10分とかからない。セミナーが終わったのが5時半だったので、いつもより随分早く帰った。週末なのでこれからの2日間、何をしようか考えると楽しくなる。ここ最近、ずっと予定が入って忙しかったので、久しぶりに何もない週末である。何も予定がないという状態が好きで、何をしようかキャンバスにパレットから自由な絵を描ける、このフリーな感じがとてもいい。
 さて、久々にキャピタリストブログらしく、さっそく今日聴いてきた話をもとに、IPO市場について書きたいと思う。今年のIPO社数はまだ16社。12月に更に3社公開すべく承認が下りそうであり、それを入れても19社で終わりそうである。30年ぶりの低水準となるようだ。2006年188社→07年121社→08年49社→09年19社(見込み)という感じで、激減している。今年は当初30社位かと言われていたが、それをも大幅に下回ることになる。1992年に需給の悪化からIPO市場が半年間ストップしたことがあって、その年が27社であった。99年に新興市場が出来て、2000年には204社が公開を果たした。その大公開時代から、出口市場は1/10になってしまった。VCがどこも干上がっている。
 2009年の特徴は二極化と寡占化だという。新興3市場は激減しているが、東証2部は前年と同水準を維持している。ちなみに前年が49社中東証2部上場は5社であったが、今年は16社中5社である。主幹事証券は2005年には22社にまで拡大したが、今年は大手証券中心に6社に留まる見込みである。中小証券会社では主幹事業務から撤退する動きもある。また、監査法人は06年にやはり22法人にまで拡大したものの、09年は大手3監査法人トーマツ、新日本、あずさ)のシェアが94%となっている。
 何故ここまでIPO市場が低迷することになったのか。大きく分けると、ざっと4つ。第1には、景気悪化でIPO予定企業の業績が悪化したこと。右肩上がりの業績を示せるところがばたっと減っています。第2には株式市場の低迷が継続していること。上場メリットが低下しており、経営者のIPOマインドが冷え込んでいます。第3には主幹事、取引所の審査の厳格化。上場後の不祥事や決算下方修正の続出したことにより、内部管理体制、利益計画の妥当性を厳しく審査されるようになりました。加えて、株主属性、反社会的勢力、反市場勢力との取引チェックも厳しくなり、審査が滞るケースもあります。第4には上場コスト負担の増加です。J-SOX、四半期報告制度導入等による企業負担が増加したことです。
 Jasdaq市場に上場予定の企業イメージはだいぶ変わりつつある。中位値の経常利益は2007年には451百万円であったが、09年では869百万円にバーが上っている。それ故に上場予備軍の底辺の幅が1/5から1/6に狭まっているのではないかという。我々VCのビジネスが細るわけです。Jasdaq市場が学校だとすれば、合格点が倍近くに上ってしまったので、学校偏差値も上ってしまったということです。
 また、株価水準を見るPERも低迷しており、2006年IPO全市場中位値が23.3倍であったが、以降、07年14.9倍→08年10.1倍→09年10.8倍となっている。IPO社数も減れば、株価も低迷、いいことはない。しかし、初値騰落率(公募価格比)で見ると、サブプライム問題やリーマンショックで厳しい状況だったが、今春くらいから海外を中心に投資家心理が改善しており、今年のIPOは比較的堅調な初値形成が続いています。
 また、IPO社数が減った分、業績好調銘柄の株価は好調であり、公募価格比でグリーは205%、テラが401%、大幸薬品が446%、クックパッドが174%などとなっています。では、今後どのようになっていくのだろうか?過去20年間のトレンドでは、IPO社数が長期間にわたり低迷した事例は殆どない。だから、いつまでも低迷することはない。しかし、大量公開時代は終わったと考えるのが正しいのだろう。少数精鋭のマーケットの中で、IPOできた企業は高い評価につながるし、そうした企業が徐々に増えることで、いったん信用を失った新興市場にも投資家は戻ってくるのだろう。