神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

シアトル美術館所蔵「美しきアジアの玉手箱」

macky-jun2009-09-05

六本木ミッドタウンにあるサントリー美術館に妻と行ってきた。先般、サントリービール工場見学に行った際に貰ったチケットがあった。シアトル美術館所蔵の日本・東洋美術名品展「美しきアジアの玉手箱」をやっており、この日曜日(9/6)までで終わってしまうのだった。浮世絵を別にすれば、あまり日本の美術品に関心は無かった。2年前にオープンしたミッドタウンにも行ったことがなかった。混んでいるからと、近づくのを躊躇っていたら、あっという間に2年も過ぎていたというのが正直なところだった。だから、今日はサントリー美術館に行くついでに、漸くミッドタウンに行く口実ができ、たまには妻にランチでも御馳走しようと、スペイン料理店「Bodega Santa Rita」の予約もして、久々のデートとなった。http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/09vol04/index.html
 あまり期待感を持ってなかったが故に、展示会は素晴らしく、より感激できた。シアトル美術館は1933年、アメリカ西海岸の港湾都市シアトルに設立された。イチローシアトル・マリナーズ、うちの子供たちが働くスターバックス・コーヒー、マイクロソフト、アマゾン・・・等の本社がある洗練された、馴染みのある都市だ。同館が長い歴史の中で育んだ7,000件にもおよぶ日本・東洋美術コレクションから、鎌倉時代の名宝「浦島蒔絵手箱」、シアトル美術館を代表する江戸時代初期の屏風「鳥図」をはじめ、時代もジャンルも多岐にわたる選りすぐりの名品約100件を一堂に公開した。同館のコレクションがアメリカ国外でまとまったかたちで公開されるのは世界で初めてのことらしい。まるで玉手箱から次々と取り出された宝物のような展示会だった。タイトルの「美しきアジアの玉手箱」は言いえて妙である。
 この美術展を観ていて、ずっと考えていたことがある。かつて欧州の美術館や博物館を訪れて、エジプトやメソポタミアの遺跡や美術品が何故欧州にあるのか、と不快な気持になったことがあった。先般はアヘン戦争に乗じて欧米列強国に持ち去られた、清朝の十二支のブロンズ像が話題になったことがあった。http://d.hatena.ne.jp/macky-jun/20090302 この展示物もひょっとしたら、太平洋戦争に負けた日本の宝が、戦勝国であるアメリカに戦後混乱のドサクサの中で、持ち去られたのではないか、等と穿って考えてもみた。しかし、詳しくは知らないが、シアトル美術館の所蔵品は館長のリチャード・フラー博士と、副館長のリー氏という目利きがいて、購入もしくは寄贈されたものの収集品であるようだ。
 今日、展示されていたものは、中には紀元前10〜20世紀という古代のものもあったが、保存状態も極めて良かった。修復に当たっては日本人の女性が尽力されているのも知った。シアトル美術館に所蔵されていたから、こうして日本に再び帰ってきて、いい状態のものを観ることができた。日本にある美術品であれば、これ程真剣には観なかったであろう。そして、世界中の人に日本や東洋の文化を紹介してくれていることを考えれば、日本に必ずしもある必要はないのではないか、とも思った。先般、来日したボストン美術館の浮世絵も、海を渡ったからこそ、ボストン美術館の技術で高度な状態で保存されていた。美術品は文化大使でもある。
 かつて、海外のお金持ちが日本の美術品や浮世絵を収集し、バブル期には西洋の印象派の絵画を日本人が信じられないような価格で買い漁った。お金と美術品が空の上を飛び交った時代があった。しかし、時空を超えて、古(いにしえ)の日本やアジアの作品に出会えたのには、複雑な気持ちも多少あるが、嬉しいものである。