神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

出版業界の救世主になれるか

macky-jun2009-05-28

   斜陽だと言われる出版業界に変革の兆しが見えつつあるのかもしれない。先般、このブログでもお馴染みの中古書店チェーンブックオフに、大日本印刷のほかに小学館講談社集英社等出版大手が資本提携を発表したのだ。従来、ブックオフ等のセカンダリー流通を行なう古本チェーン業態は出版社にとっては敵であった。それが一転して、手を組むことになったのである。
 出版業界にとっての最大の悩みは返本率の多さである。約40%の書籍・雑誌が書店から出版社に返本され、廃棄されているのである。(実にもったいない。捨てるならこの私に譲ってほしいものである。)再販制度と委託販売制に手厚く守られている日本の出版業界は、消費者不在のギルドのようなものである。原則書店の利益は20%と決まっているが、売れ残った本の在庫リスクを取る必要がない。すなわち、書店は出来上がった本を陳列するだけの場所貸し業となっており、売るための営業努力や工夫が乏しいと言われている。一方、出版社は大量に返ってきてしまう本に怯えているのであり、経営の屋台骨を揺さぶっている。
 今回の出版大手のブックオフへの出資の意味合いは、彼らの持つ1000店近い販売網を使って、返品された新古本を「自由価格本」として捌くためにあるのではないだろうか。せっかく苦労して作られた本が廃棄されずに、ディスカウントされ、より多くの人の手に渡っていくのは、本好きの私としては嬉しい限りである。この動きは出版業界の流通慣行やルールを変えていく端緒になるかもしれない。
 大日本印刷DNP)という印刷業界の雄である会社が、出版業界改革の台風の目になっているようである。その前には中堅の老舗出版である主婦の友社への資本業務提携を発表していた。また、小売の丸善ジュンク堂、取次卸の図書館流通センターに出資し、傘下に収めた。出版→印刷→取次卸→書店というバリューチェーンをグループ化することに、どれ程の意味があるかはわからない。しかし、ペーパーをベースとした印刷業が本業であったDNPが、近年はデジタル化の流れの中でデジタル・IT関連事業に積極的に新規事業展開を図ってきた。そのDNPがまた本業回帰をして、ペーパーベースの出版業界の再生に乗りだしてきた。やはり、出版社と印刷会社は持ちつ持たれつの関係にある。96年以降、減少を続ける出版市場の流れを変えるきっかけとなるだろうか。はたまた、出版業界の救世主になれるだろうか。ブックファンの一人として期待したい。
 写真は我が家の近くにある「出版クラブ会館」の建物です。出版業界の方々には馴染の集会場です。江戸時代には天文台があり、その前は牛込城があった歴史的な謂われのある場所です。