神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

浅田次郎 「憑神」

macky-jun2009-05-26

今日は浜松まで日帰り出張でした。車中から見る富士山はさすがでした。霊峰富士という表現がぴったりな、他を超越している、特別な存在のように感じました。外人客もたくさん乗っていて、たぶんみな感激していたのではと思います。日本人の私が見ても、何度見ても、その都度、感動してしまいます。やはり、富士山は登る山ではなく、遠くから眺める山だと再認識しました。
 今日は浜松往復だったので、片道1時間半、往復3時間、本もたっぷり読めたし、満足です。いまは久々に浅田次郎モノで「憑神」を読んでいます。舞台は幕末で、運に見放された貧乏御家人の話です。主人公の別所彦四郎は文武に秀でながら出世の道をしくじり、夜鳴き蕎麦一杯の小遣いにも事欠く次第である。ある夜、酔いにまかせ、小さな祠に神頼みをしたら、それがあろうことか、なんと貧乏神だった。とことん運に見放されながらも懸命に生きる主人公の姿に共感できます。何となく、最近の自分を見ているみたいで笑ってしまいます。
 時代小説もたまに読むと面白いです。歴史で江戸時代を見ると、自分たちとは違う日本人の話と思えてしまいますが、小説で読むと、我々と何ら変らない、先輩たちの話として読めます。より時代を身近に感じられる気がします。それが時代小説、歴史小説の良さでしょうか。
 浅田次郎の小説はユーモアもたっぷりだし、泣けるし、ストーリーテラーとしてはとても実力のある作家です。後世では夏目漱石森鴎外と並び称される小説家にならないかなんて、秘かに期待しています。その時代にあった言葉表現、用語とか歴史考証もしっかり調べておられるようです。例えば、いま私が住んでいる場所は、江戸時代には御徒組という下級武士の屋敷、いわば現代でいう社宅のあった土地なのですが、未だに当時の区画割りがしっかり残っている土地として陣内秀信さんの「東京の空間人類学」には紹介されています。http://d.hatena.ne.jp/macky-jun/20080203 屋敷の間取りや、俸禄の量、御家人株の値段等がきちんとした根拠あるものとして出てくる。
主人公の彦四郎が住む屋敷も、深川にある御徒組の屋敷である。下級武士の生活ぶりは当時も苦しくて、我々と変わらないやと妙に共感を持てました。