神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

ちばあきお「キャプテン」と「プレイボール」

macky-jun2009-05-05

    小金井の実家の自分の部屋だった書棚には、学生時代からの本がたくさん置いてある。社会人になってからも、本が溢れると車で運んでいたので、懐かしい本がいっぱいある。日常、通勤電車に乗っていると、ページが日焼けして茶色くなった本を読んでいる人がいる。昔、若い頃に読んだ書を読み返しているのだろう。僕も少し余裕が出てきたので、そうしてみようかなという気分になってきた。昨日、実は10数冊持ち帰ってきたのである。
 全部、学生時代に読んだ文庫本であるが、例えば志賀直哉清兵衛と瓢箪・網走まで」「和解」、太宰治人間失格」、芥川龍之介侏儒の言葉」、武者小路実篤「友情」「愛と死」、唐木順三「朴の木」、梅原猛「日本文化論」、丸谷才一「男のポケット」そして、ちばあきおの漫画「キャプテン」と「プレイボール」です。志賀直哉はじめ小説類は、美しい日本語とは何だったか、学び直すために、随想集は自分が書く作業のためのヒントとして、参考にしたかったからです。特に、唐木順三「朴(ほお)の木」は思想哲学家である作者が50歳代半ばの随筆を集めたものであるが、目次を見ていて驚いたことがある。タイトルのつけ方が僕自身のブログなり、書き物によく似ているのである。無論、向うの方が中味も高尚であるのだが、学生時代に敬愛して、読んでいたものなので、自然に自分の中に浸み込んでいたのではないかと思っている。
 早速、帰ってきて読んだのは、ちばあきお「キャプテン」と「プレイボール」である。「キャプテン」は1972年頃から、月刊別冊少年ジャンプに連載し、「プレイボール」が1973年から週刊少年ジャンプに連載していた。僕が中学生で、野球に夢中になっていた時代だった。だから、「キャプテン」の主人公墨谷二中野球部キャプテンの谷口タカオはまさに、同年代である。当時、僕も中学野球部のキャプテンをしていたので、自分に重ね合わせながら、熱心に読んだ覚えがある。
 両作品とも当時の少年たちに大人気であり、少年ジャンプが発行部数を伸ばした原動力になったと言われている。「キャプテン」は下町の墨谷二中野球部が舞台になっており、名門青葉学院野球部二軍補欠に過ぎなかった谷口が同校に転校し、努力とひたむきさで、弱小野球部をまとめあげ、全国優勝を果たしてしまうという夢のような話だ。以降、キャプテンの座は谷口→丸井→イガラシ→近藤とバトンタッチされていき、それぞれのキャラクターによる、キャプテンとしての采配の違い、戦いぶりをとても緻密に、丁寧に描いている作品である。僕はこの中ではやはり谷口くんに一番惹かれる。凡才であったが、ひたすら頑張り、決して諦めない姿勢は周りの仲間を自ずと動かしていく。リーダーとしてあるべき姿勢が描かれている。
 そして、「プレイボール」は中学を卒業し、墨谷高校に行った谷口くんのその後の活躍を描いた高校野球部篇である。どちらも大変な力作であり、甲乙付け難く、面白く、夢中になれる。今読んでも、惹き込まれてしまう魅力を持っている。ちばあきおさんは、「あしたのジョー」や「ハリスの風」や「のたり松太郎」で有名なちばてつやさんの弟であるが、昭和59年、41歳の若さで自ら命を絶たれたとのことである。とても残念なことであるが、少年たちを温かい眼で描いており、その作品は永久に読み続けられることだろう。