神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

「20世紀少年」完読

macky-jun2009-01-01

 今日は元旦である。夕方、買い物ついでに街に出かけ、毘沙門天善国寺で初詣を済ませてきた。今年は妻が風邪をこじらせており、恒礼の光照寺での除夜の鐘つきも赤城神社の初詣出も行わなかった。だから、年末から休みに入っても、専ら年賀状を書いたり、家でいま流行りの”巣籠り”をしていたのだった。
 そんな生活を送っている僕ですが、ついに龍ちゃんが送ってくれた浦沢直樹の「20世紀少年」続編「21世紀少年」全24巻を読破した。久々に漫画本に集中した。単行本シリーズを何冊も続けて読んだのはいつ以来だろうか。「スラムダンク」「ドラゴンボールZ」「ゴルゴ13」「セニョール・パ」「ベルサイユのばら」「巨人の星」「火の鳥」・・・これまで幾つもの作品に夢中になり、読み耽ったものだった。
 12/27頃から読み始め、1日4〜5冊読み、ようやく今日読み終わった。飛ばさずに時間をかけて、味わいながら読む方なので、そんなに早く読めない。だから、24冊も送って貰った時には、本当にどうしようかと思ったものだった。しかし、これが読み始めると、とても面白いのだ。たちまち、抜けられなくなり、日々「20世紀少年」のケンヂやカンナたちと時間を過ごすのが何よりの楽しみに変わった。毎晩、深夜まで読み耽ってしまったのだった。
 作者浦沢直樹は1960年1月2日生まれで、明日49歳を迎える。僕らとは学年が一つ下なだけである。この作品の登場人物も浦沢と同年代に設定されている。その同時代性が自分にとって、何とも言えないアイデンティティーになっている。この作品は過去に飛び、未来に飛び、タイムスリップを繰り返す。我々が小学生時代を過ごした、昔懐かしい東京の街並みが度々登場する。とてもいとおしさを覚えた。
 あの時代、いたる所に空き地が存在し、フェンスで囲うような野暮な真似はせず、建物を着工するまでは子供の遊び場として、当然の如く提供されていたものだった。ちょっと子供が怪我をしようが、いまの時代のように訴えるような馬鹿な親はいなかった。そこで我々は作品の登場人物たちのように”秘密基地”を造ったり、草野球グランドとして、遊ばせて貰った。空地はマンション用地になるものが多かったためか、それなりの広さを有しており、子供の草野球レベルでは充分な広さだった。但し、デコボコなので、ゴロの捕球は大変だった。今の子供達に比べれば、ファミコンも無かったけど、遊びの世界は創造性に満ちており、とても豊かだった。
 この「20世紀少年」の世界も、そんな創造的な世界から創られた「よげんの書」がベースとなり、展開していく。物語は登場人物が子供から大人になっていく過程を描き、時代を自在にフラッシュバックしたり、未来に飛んだり、変幻自在で、時に別の人間から見た同じシーンが繰り返されるという高度な手法をとっている。人物関係が複雑に作られており、飽きさせない。謎の人物”ともだち”を中心として、謎解きを必要とする関係もあり、厚みがある。ただ、悪役となる側の人物たちが、子供時代のトラウマを強く引き摺り過ぎているのは、やはりフィクションなのかという気がする。
 僕自身は主人公達にすっかり感情移入してしまい、いくつかの場面では涙がこぼれそうな程の感動を覚えた。例えば、新宿歌舞伎町教会にて、カンナがピンチの場面で、海ほたる刑務所から脱獄したオッチョがステンドグラスを破って登場するシーンだ。最大の見せ場だろう。ユキジはとても強い母のような存在だ。ケンヂへの思いを抱えつつ、正義感を人一倍持って、生きる清々しさが素晴らしい。カンナの母親である、キリコが自分の過ちを深く悔い、ひたむきにワクチン開発で人類を救おう、とする姿にも打たれる。ケンヂやカンナの生き方、人柄、能力に惹かれて集まってくる仲間たち。これだけの長編漫画を引っ張っていくのは確かに大変であり、中弛みも否めないが、ここぞという場面で感動を取れるのは、浦沢直樹の力量であろう。
  前に2/24「地下鉄(メトロ)に乗って」のブログhttp://d.hatena.ne.jp/macky-jun/20080224で、タイムスリップに対しての憧れの気持ちを書いたことがあった。その時は結びとして「誰にでもタイムスリップしてみたいという願望はあるのだろう。いつの時代に行ってみたいと思うだろうか。誰に会ってみたいと思うだろうか。また、会ってみたい自分はいつの頃の自分だろうか。(2/24)」と、書いた。この作品はそうした自分の気持ちを体現してくれており、嬉しかった。同年代の方はそういった気持ちを持たれる方が多いのだろう。
  実はこの作品についてはもっと踏み込んで書きたい気もするのだが、このあと今我が家にある全24巻を、中学時代の仲間と廻し読みすることとなっている。恨まれてしまうので、彼らの為にこれ以上は細かく明かさないこととしたい。 スーダララ、グータララ!