神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

なぜフェルメールなのか

macky-jun2008-11-21

 金曜日、会社を6時に出て、上野公園にある東京都美術館で開かれている「フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」に行ってきた。開室時間は通常午後5時までだが、金曜日だけは8時まで開いている。8/2〜12/14までの4か月にも亘りやっているが、土日はとても混みそうだし、平日休みを取って、空いている美術館で一人静かな時間を愉しみたいと思っていたが、なかなか休みが具合よく取れず、延び延びになっていた。一週間の終わりを気分よく締めたいなという気持ちと、この日、妻は新国立劇場にバレエDavid Bintleyの新作「アラジン」を観にいっているので、急遽この日に行くことにしたのだった。
 されど、金曜日の夜は仕事帰りの人でいっぱいで結構混んでいた。17世紀のオランダの画家フェルメールの作品が7点、外に同時代のデルフトの画家の作品を併せて、全39点が展示された壮大なものだった。この時代のオランダはスペインの支配下から独立し、一気に繁栄し、黄金時代を迎えた。このデルフトでも繊維産業が盛んで、事業家たちが画家を支援した為に、多くの画家が活躍した時代でもあった。フェルメールに行く前に疲れちゃうぞと思い、急ぎ足でざーっと1階の展示場を観て、いよいよフェルメールの展示される2階に行く。作品の前は人だかりで凄かったが、7点を時間をかけて観る。Johannes Vermeerヨハネス・フェルメール(1632-1675)の現存する作品数はわずかに30数点(正確な数は判っていない)。今回、一挙7点を公開するのは異例のことで、日本では過去最多で、内4点は日本初公開だ。最高傑作とも言われ、ヒトラー伝説もある「絵画芸術」が作品保護のために出品不可となったのは残念だった。どれも素晴らしかったが、どれが好きかと選べば「小路」と「リュート調弦する女」だろうか。そもそも美術館に行くことはあまりないし、絵の感動を表現するうまい言葉も持っていない。学生時代の美術の成績も芳しいものではなかった。その魅力を伝えることはできないが、好きな作品かどうかを分けるものは、目の前にして感じる気持ち良さなのだろうか。
 フェルメールを表わす言葉として、よく使われるのが「静謐(せいひつ)」という表現だ。確かに、彼の作品は静かで落ち着いた雰囲気で満ちている。決して躍動感や強い感情表現はそこにはない。差し込む光と拡散。そこから生まれる絵の中の奥行き感。柔らかな光は自然な陰影を醸し出し、静寂と安らぎをもたらしてくれる。凛とした透明感が心を体の細胞を隅々まで浄化していく。それがフェルメールの魅力なのだろうか。
 ではなぜフェルメールが日本で、世界で、ここまで騒がれ、ブームとなっているのだろうか?今、展覧会でもっとも集客が見込める画家と言われているらしい。私自身は正直言って、「牛乳を注ぐ女」や「真珠の耳飾りの少女」はどこかで観た記憶はあったが、たぶん中学か高校の美術の教科書で観たのだろうが、フェルメールの名前は何年か前までは知らなかった。そもそもこの画家は明治・大正時代には日本でまったく知られていなかった。フランスですら、レンブラントは知られていたものの、フェルメールは無名だったようだ。フェルメールが日本に初上陸したのが1968年「レンブラントとオランダ絵画巨匠展」で、今回も来日した「ディアナとニンフたち」1点のみで、完全に脇役だった。1984年に「真珠の耳飾りの少女」が初来日するが、いまや世界一有名な少女も、当時はあまり注目されなかったようだ。世界では1995年のワシントン・ナショナル・ギャラリーでの大回顧展で世界中から22点をかき集めて33万人を集客し、一挙に火が付き、これがヨーロッパに飛び火する。そのブームが日本に及んだのは、2000年の大阪市立美術館フェルメールとその時代」展からである。以降、今回が7回目のフェルメール作品の出展で、2004年以降は5回目にもなる。日本人ばかりか、外国人もブームには弱い。だけど、特に日本人はブームに乗り易いとも言われる。ミーハーを自称する私はまさに代表的な日本人らしいが、これほど騒がれるフェルメールとはいったい何なのか、という関心・疑問が予てからあり、この日漸くそれに対する解答を得ることができた思いだ。まずはブームだろうと、恥ずかしがらず、馬鹿にせず、自分の目で確認してみることが大事なのではないだろうか。三連休前のこの日、とてもいい時間を送ることができました。
 ところで、この日会場で、まさにフェルメールの展示されている部屋で、偶然にも会社の先輩3名とお会いしました。また友人と来ていた会社の女性Fさんにも出会って、暫く一緒に感想をいいながら回りました。先輩達とは閉館の8時に出口で待ち合わせ、御徒町にくり出し、居酒屋でフェルメール談義をしたのでした。Mさんはフランクフルト・ウィーン等欧州勤務をしていたこともあり、当地の美術館周りをされて、既にフェルメール作品は26点も観られているとのことだった。バレエやほかの芸術にも造詣が深くて、我が社の文化部長です。三連休前の金曜日の晩、みなさん考えることは一緒でした。それにしても、90人しかいない会社のメンバーにばかり会うということは、ひょっとして我が社は文化的レベルが高いってことなの・・・!?