神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

不思議の国のアリス

macky-jun2008-11-12

 Chick Coreaの「Mad Hatter」を聴いている。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をフィーチャリングした、1977年の作品で今から31年前のものになる。Jazzで何かを主題にとって、コンセプトアルバムを創るのは極めて珍しいと思うけど、才気溢れるChickはそれに挑戦している。このLP(当時はCDは勿論のことなかった)を買ったのは大学生の頃である。現在、我が家にはLPが2枚あり、CDが1枚ある。あまり、記憶は定かではなかったが、このアルバムを気に入った私がかみさんにもプレゼントしたようだ。そういう意味では記念的なアルバムともいえる。未だに飽きずに繰り返し聴いているのも、そういう背景もあるかもしれないが、いや、このアルバムの持っている普遍性がそうさせているのだと思っている。
 このアルバムは Chick Coreaの一つのピークを迎えていた時期で、時はフュージョン全盛の時代。ちょうど私が大学生の頃、私にとっては学生生活=フュージョン(混迷)のような時でした。彼はReturn To Foreverというブームの先鞭をつけたスター軍団を率いていました。絶頂期にあり、彼はそのRTFの活動に飽き足らず、新たな展開を求めており、終止符を打って生まれたアルバムがこの「Mad Hatter」である。ほかに Chick Corea個人名義でこの頃出したアルバムに「妖精」「My Spanish Heart」があるが、本作と含め、3部作と呼ばれる。曲調はJazzとClassicを融合させたまさにFusionであるのだが、時々登場するVocalのGayle Moranは彼の奥様でもあるのだが、Opera調なVocalが実に幻想的で素晴らしいのだ。Jazzよりも近代クラッシックを想わせる演奏である。セッションメンバーがまた凄くて、Herbie HancockFender Rhodes)、Steve Gadd(Drums)、Eddie Gomez(Bass)、Joe Farrell(Flute、Tenor Sax)等である。とにかく30年の時空を感じさせない新鮮さを失っていないアルバムなので、聴いてみてください。
 同じように「不思議の国のアリス」をフィーチャリングしたのが、谷山浩子である。彼女の1977/9〜12録音のアルバム「もうひとりのアリス」である。今こう書いていて、驚いたのはまさに2人が録音したのがまったく同じ時期なのである。Chickが77/11である。同じ時に、違う土地で、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」にテーマを求めて着想し、ふたつの全く違う「アリス」が生まれた。このブログを書き出した時は気づいていなかったので、いつのまにか「不思議の国」にこの私も入り込んでいたのである。いまだに現役で活躍している谷山浩子が、学生時代に着想した2作目のアルバムである。A面がアリス編で「アリス(プロローグ)、鏡よ鏡、魔法使いの恋人が逃げた、青い鳥、不思議なアリス、赤い靴、アリス(エピローグ)」と続く、西洋童話の世界である。B面は趣をガラッと変えるが、日本昔話に題材を替え、柳田国男の世界が広がる。谷山の歌詞は辛口で刺激的で、不思議でかつウィットに満ちている楽しい世界だ。特に彼女の第1作「ねこの森には帰れない」、この第2作は歌詞の節回しの巧さを感じる。
 Chick Corea谷山浩子、まったく違うジャンルのミュージシャンに見えるが、(Chickの方がだいぶ年上であるが)同じ時代に活躍し、まさに同じタイミングで「不思議の国のアリス」をフィーチャリングしてアルバムを創った。しかも、二人とも30年後の今も、第一線で活躍しているミュージシャンでもある。同じ頃から好きだったミュージシャンですが、「不思議の国のアリス」というKey Wordで繋がることを再発見しました。