神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

株価とは何なのか

macky-jun2008-10-30

  株価とはいったい何なのであろうか。株を商売にするものでありながら、この根源的な疑問に頭を悩ましている。世界を代表する企業トヨタの株価純資産倍率(PBR)が0.8倍台になった。そもそも東証上場企業の平均PBRも0.8倍台である。半数の企業が1倍を割っている。1倍というのは時価総額が純資産額と同じということであるから、いま事業を止めて会社を解散した時の資産処分価額と同じだということである。すなわち、トヨタのビジネス価値はマイナスとしてカウントされ、解散価値の方が上回ってしまうという何とも理解できない株価なのである。
 小幡績氏(慶応大学大学院経営管理研究学科准教授)の著作「すべての経済はバブルに通じる」の中で、(1)ファンダメンタルズは無力である。(2)個々の投資家の内面の審理が株価の変動を作り出し、そして、その心理は群集化する。すなわち、暴落局面では株価の変動及び市場のうねりは群集心理により支配される。(3)群集心理を支配しようとする投資家が存在し、暴落局面では、株価はそのような投資家によって動かされる可能性が高い。と述べている。ファンダメンタルズの変化では、暴落局面での株価の変動を全く説明できない。ならば、ファンダメンタルズで説明できる平常時の株価とはどういう状態の株価を言うのであろうか。
 我々はPERやPBRをもとに、株価が高いとか安いとかを比べる。しかし、基準とすべきそのPERをどう考えるべきなのか。確かに現在のような暴落時には異常値を示すのはわかる。振幅のある中で、あるレンジで平均値を採るというのも手法の一つであろう。何をもってその会社の価値を評価するかは、何を尺度とするか、何を前提条件にするかでとても恣意性が高くなる。
 VC等、投資家が株式を買う時、会社から提示してくる株価は、似たような業種・事業の他社(公開会社)を比較した株価(類似会社比準法)か、Early Stageの会社であれば、今後の業績成長率が高いであろうとのコンセンサスから将来キャッシュフローの現在価値を算出する評価方式(ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法)から出してくるケースが多い。だけど、DCF法は会社の収支予想に基づくものであり、それをどう考えるかで大きくブレる。概して、会社提出の収支予想は固めに出しましたなどと言ってくるが、最高に全てうまく行った時のベストシナリオで算定されることが多い。また、類似会社比準法は直近実績もしくは今期予想の収益をベースとするが、比較対照の会社をどれにするか、どのタイミングを採るかで、これも恣意性を含んでいる。
 すなわち、株価評価でこれといった決め手はない。そもそも2日前に7,000円を切った東証平均株価が今日は9,000円を超えたのである。本来ならそれほど大きくは動かない筈のインデックス株価がこれほど動くのである。まして、新興市場の株価はピークのライブドア事件前の06/1時との比較で1/10になってしまった。ものの価値がこれほど大きく変動する社会の中で、何を軸にして考えていけばいいのか、悩みはいっこうに尽きないのである。