神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

インベストメントバンクの破綻(4)

macky-jun2008-10-05

   9/29(月)米下院で金融安定化法案が否決されると、米株式市場はダウ工業株30種平均で過去最大の下げ(▲777ドル)を記録した。半ばパニック状態で、これまでの最大だった2001/9同時テロ直後(9/17の▲684ドル)を更新した。翌30日の東京市場日経平均が580円超の下げを記録し、3年3ヵ月ぶりの安値となった。世界的に市場が冷え込み、最終的に金融安定化法案が認められないと、いよいよ世界恐慌かとの恐怖が高まった。10/3(金)に同法案が数々の修正を加えて可決され、まずは恐慌の一歩手前で踏みとどまったのだった。
 下院では最初23票差の反対で否決されたので、説得工作で何とかなるかと言われていたけど、結果的に「成立に向けた最大の”ロビイスト”はダウ平均だった」という小話がある。9/29の一日で時価総額1兆7000億ドルが吹っ飛んだが、法案規模は7000億ドルだったので、否決で倍以上の富が吹き飛んでしまったことになる。
 何故これほどまでに法案がゴタゴタしたかといえば、米金融機関経営トップの報酬の高さにある。公的資金で支援されるのに貰いすぎであるという国民感情や選挙区の中小企業経営者からの突き上げが強かったという。例えば、一番貰っているのは、ゴールドマン・サックスのCEOで74億5400万円、続いて破綻したリーマン・ブラザーズのCEOがなんと36億4400万円、JPモルガンチェースのCEOが29億4600万円、メリル・リンチのCEOが18億円3400万円・・と驚くような高額報酬を貰っているのだ。一方、意外に少ないのはモルガンスタンレーCEOが1億6900万円、シティグループCEOが6000万円、公的支援されるAIGのCEOは4600万円である。ちなみに米国大統領の年収は4200万円であり、相当な開きがある。今回の金融危機でよく登場するポールソン財務長官は元ゴールドマンのCEOであったのだが、03〜06年で105億円以上の報酬を得ている。ポールソンは破綻したのがライバルのリーマン・ブラザーズではなく、ゴールドマン・サックスであったら公的支援をしていたのだろうか。
 それにしてもケタ違いの報酬には驚かざるを得ない。米大リーガーのA.ロッドやサッカー選手のロナウジーニョやF1レーサーのM.シューマッハ、はたまたマイケル・ジャクソンもびっくりするような高さである。破綻しても株やストックオプションが無価値になるだけで、現金収入は貰い得で、何らペナルティーなり、返還義務もないのだろうか。それ故にレバレッジを膨らませて、大きくリスクテイクしてしまい、その結果、破綻に突き進んでしまったのだろうか。インベストメントバンクの破綻とは、人間の欲望の深さが起こした業であろうか。