神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

インベストメントバンクの破綻(3)

macky-jun2008-09-25

   今週に入ってまた大波乱が続いている。日本勢が米国の投資銀行の破綻に伴う金融大再編で攻勢に転じたというニュースだ。23日に報じられた三菱UFJFGによるモルガン・スタンレーへの巨額出資、と野村HDによる経営破綻したリーマン・ブラザーズのアジア・欧州部門の買収である。
 高校時代の友人から、ちょうどその件で今日メールを貰い、以下内容の質問を頂いた。
 (友からの質問)
「今回のサブプライム問題を背景とした米国金融危機に際し、先日、三菱UFJモルガン・スタンレーに対し9000億円もの出資を決め、昨日は野村HDがリーマンブラザーズ欧州部門を買収するといった報道がなされております。これらの日本の金融機関の動きは何を目的として行われているのでしょうか?私のような素人から見ると米国の失敗を日本が尻拭いしているように感じるのですが、これらの出資や買収には素人には判らないメリットがあるのでしょうか?そして、原資が我々の預貯金であるのであれば、不況にあえぐ日本にとってこれらの動向は由々しき事であるように思うのですが・・・。」
 (小生からの返答)
 貴職の見解は非常によくわかりますし、まさにその通りかもしれません。モルガンスタンレーは、三菱UFJにとっては格好の買い物だったようです。20%の出資のみなので、経営は実質しなくていいけど、連結収益にモルガンスタンレーの収益を取り込めるとの思惑があるようです。外資の経営には三菱UFJといえど自信がないようです。但し、3〜4日で結論を出しているので、十分なデューデリは出来ていないと思われますので、資産内容がどうなっていますか。開けてびっくりというような事態が待っているかもしれません。まさに博打です。投資銀行業務の遅れを感じていたようですし、憧れがたぶんあるのでしょう。だけど、投資銀行というビジネスモデルが今後も続いていくのか、大いに疑問の残るところです。
実は三菱UFJより前に、みずほFGにも打診があったようですが、結論は支援見送りでした。先にメリルに出資しているという理由もあったと思いますが、外資のしかも投資銀行をマネージできるのか、というのが理由のようです。そもそも、1億円近く年収を貰う人たちを、頭取でさえ遥か低い年収に留まっている邦銀が管理できないのでは?そもそも文化が違うのでは?・・・という風に理解しました。三菱UFJとみずほとどちらの判断が正しかったのかは、今は判りませんが、いずれ時間が結論を出すでしょう。
 野村のケースはいったん破綻した会社であるリーマン・ブラザーズを買うのでとても安く買えます。しかも、買収と違って、資産価値の下がる恐れのある不動産や整理に時間のかかる取引は除いて、基本的に人材に絞った買収であり、三菱UFJのケースとは違います。まさにハゲタカです。しかも、人材と商圏と両方をまるごと取得できます。尤もどれだけ有能な人材が残っているか、というのがポイントであると思います。リーマンの名前は完全に消えて、野村HDになるようですから、これまでの年収は当然期待できなくなります。まさに人材のマネージメントリスクを取るということです。野村はバークレイズと水面下で争い、北米部門を1,800億円で買ったバークレイズに対し、欧州・ロシア・中東をなんとわずか2ドルのただ同然で、アジア・太平洋を225Mドル(240億円)で手に入れました。決め手は雇用の維持だったようです。だから引き継ぐ人材の人件費という見えないコスト負担が発生します。野村はこの地域が弱く、リーマンの同部門買収で強化が可能になります。但し、完全に見えないリスクから逃れているかはわかりません。
 三菱UFJ同様に両社とも、ババをつかんだ、ということになるかもしれません。貴職が仰るように「米国の失敗を日本が尻拭いしている」ということかもしれません。破綻してしまったビジネスモデルを有り難がって、買いに行くのですからお人好しの馬鹿野郎かもしれません。だけど、レバレッジを効かす証券化業務は破綻しましたが、M&A業務や海外株式引受業務はまだまだこれから価値があるとの思惑のようです。
 積極果敢に出た野村HDと三菱UFJゴールドマン・サックスからの支援要請を今かと待っていたけど、なしのつぶてだった三井住友G。結局、何もしなかったみずほFG。どこが正しかったのかはいずれ歴史が証明するでしょう。
 実は80年代も日本の銀行が海外の銀行を買収・出資した時代があったのですが、結局何の果実もノウハウも残せなかったようです。アングロサクソンをこの金融ビジネスで管理するのは日本人にはやっぱり荷が重いのでしょうかね。