神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

Gary Becker & Myron Scholes講演会(1)

macky-jun2008-09-10

 今日は会社の有休を取って、小生が講師をする大学で行なわれたノーベル賞受賞者を囲むフォーラム「21世紀の創造」に出席した。米国からノーベル経済学賞を受賞した二人の学者 Gary Beckerさん とMyron Scholesさんの講演会が「グローバリゼーションと人類の福祉」のタイトルで行われた。小生にも招待券が届いており、たまには最前線の知にも触れてみたいとの気持ちで参加したのだった。実務の世界にいると、時々自分の世界を離れて、客観的に物事を考え直してみたいということがある。
 ゲーリー・ベッカー(Gary Becker)さんは1930年生まれ。55年シカゴ大学で博士号取得。「人間の活動を経済学で分析するなど、経済学の研究分野を拡大した」として、92年ノーベル経済学賞受賞。現在もシカゴ大学の現役教授である。
 マイロン・ショールズ(Myron Scholes)さんは1941年生まれ。シカゴ大学で博士号取得後、83年からスタンフォード大学教授。「金融派生商品デリバティブ)取引の基礎理論構築に貢献した」として、97年にノーベル経済学賞受賞。ブラック・ショールズモデルで我々金融マンには馴染である。米大手ヘッジファンドLTCMの経営に参画して、同ファンドがロシア危機で破綻したのは有名である。
 先ずはショールズ教授が「不確実性とグローバリゼーション」のタイトルで話をされ、20世紀は米国の世紀と呼ばれたが、21世紀はどうなるのか。Bricsが注目を集めているが、米国に取って代わるのか。そもそも繁栄とは循環的なものか、恒久的なものか。何の指標をもって繁栄というのか。という問題提起をされた。今は革命の途上かという不確実性の下でのグローバリゼーションに、人類はどう対応していったらいいか。コストとベネフィットという観点なのか。指標としては成長率なのか、社会全体の富なのか。中国、インドで将来に向けて正しい投資がなされているのか。
 現在は非常に大きなショック(偶発的な事件、変化)が起き易い時代である。例えば、サブプライムローン問題であり、2001年のドットコム危機である。現状のモデルでは解決できないので、新しいモデルが出来るまで時間が止まる。ショックがあれば学習ができる。今までやってきたことを再考する必要がある。今までの間違いとは何だったのか?ショックや不確実性に対応する柔軟性がカギである。
 講演の一言一言が示唆に飛んでおり、硬い話題のテーマなのに涙が出そうな程、感激してしまった。最近はこうした知的な刺激に飢えていたせいかもしれなかった。自分に照らしてみれば、このサブプライムローン問題で起きた投資ビジネスへの影響をそれぞれ、失敗の要因は何だったのか、学習して、振り返ってみなければならないと思った。それは一年前にちょうど自分自身が、社内で「失敗事例の分析」をもっとすべきだと提言したことと、同じことを言われたのだ。いざ、自分に係わることだと傷口に塩を塗るような真似はなかなかしたくないし、とても勇気がいることだとわかってきた。だけど、昨日の過ちはもうしたくないし、それを克服することで進歩がある。
 ショールズ教授も、LTCMでの失敗は大きな汚点であろう。世界的なデリバティブの理論的権威が市場で失敗をした。そうした失敗を乗り越え、「ショックがあれば学習ができる。」ということを言われているのだろう。俺も投資の失敗にめげてばかりはいられない、と勇気を頂いた。
 ここまで書いて、疲れてしまったので、明日、ベッカー教授が「高等教育とグローバリゼーション」のタイトルで話をされた内容については書かせて頂きます。お休みなさい。