神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

晴れた日に貸した傘を雨の日に取り上げる

macky-jun2008-09-02

   不動産業・建設業の破綻が相次いで起きている。8/13にアーバンコーポレーション、8/25にセボン、8/26に創建ホームズが其々民事再生手続きを申請した。何れも銀行から融資を受けられずに資金繰り破綻したのだった。銀行の貸し出し姿勢の急速な厳格化、所謂、貸し渋りが背景であると言われている。
 07/3期から銀行に適用された新BIS規制が要因となっているようだ。企業向け融資のリスク量は企業の格付けに応じて、融資額の20%、50%、100%、150%の4段階に細分化されている。景気が悪化すると、企業業績も悪くなり、融資額は変わらなくても格付けの低下に応じて、融資のリスク量は増えてしまう。仮にリスク量が50%→100%になると、融資額を半分に減らさないと銀行のBIS上の自己資本比率は低下することとなる。
 よって、銀行のとる行動として、晴れた日に貸した傘(融資)を雨の日に取り上げる(回収する)ということになってしまう。このような行動を新BIS規制という制度が後押ししているのである。また、新BIS規制がスタートして、初めてのリセッション局面を迎えたので、今あらためて制度の問題点が浮き彫りになってきた。既にミニバブルが弾け、含み損を抱えた不動産会社の格付けは引き下げられている。それに伴い、銀行ではリスク量の増加を相殺すべく、貸し渋りが起きている構造となっている。
 景気との兼ね合いが難しい。個別銀行の健全性からすれば、景気悪化で焦げ付きそうな債権は減らし、不良債権の増加を未然に防ぐべきだろう。しかし、銀行が一斉に同じ行動に出ると、企業の資金繰り倒産が増えて、景気をさらに悪化させるという悪循環に突入していく。
 このようなことを考えていくと、銀行業が本当に役立っているのかと思ってしまう。かつて、90年代後半の時代に貸し渋りならず、貸しはがしに心ならずも手を染めたことがある。直前まで、ベンチャーキャピタルで弱小中小企業の応援をしていたのに、その企業たちの敵のような貸しはがしである。
 あるとき、キャピタルで投資をした会社を異動で銀行の支店に戻り、担当をすることとなり、まさに投資をした企業から融資を回収するのが役目となってしまった。その時、その会社の社長から「お前はVCにいた時はとても見どころのあるいい奴だと思っていたけど、とっても嫌な奴になり下がってしまったな」と言われてしまった経験がある。とてもつらかった。また、ある時は冷徹な回収方針を押しつける、当時の支店長と口論をしたが、聞き入れては貰えなかった。銀行や証券がばたばた潰れていく中で、撤退戦を戦う我々にはそのような余裕や真っ当な考え方は通用しなかった。
 銀行員を廃業して、自らプロのキャピタリストに手を上げたのもそのような理由によるものだった。どしゃぶりの雨の日に傘を貸す仕事をしてきたのに、取り上げるような真似は二度としたくなかった。