神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

不動産業界の憂鬱

macky-jun2008-07-21

   不動産業界が苦境に陥っている。東証1部上場のゼファーが7/18に民事再生法適用申請手続を開始した。94年設立の新興デベロッパーとはいえ、07/3期には売上高1,279億円、117億円の経常利益をあげていた会社である。子会社の近藤産業(大阪)が08/5に自己破産し、以降当社の資金繰りも悪化した。金融機関の融資姿勢が厳格化し、外資系ファンドが急激に物件を買わなくなり、一気に資金繰り難となった。子会社を支援できる余力がなく、それが知れ渡り信用不安に陥った。
 6/24にはやはり東証2部に上場するスルガコーポレーションが同様に民事再生法適用を申請した。同社は反社会的勢力が絡んだ取引に絡み、法的な問題でゴタゴタしており、信用不安が増殖した。07/3期には売上高808億円、経常損益130億円を上げていた会社であった。
 08/3にはヘラクレス上場のレイコフの破綻ほか、中堅クラスの破綻が目立っている。今はまだ序章であり、今後、不動産業界のドミノ倒しが始まり、一層緊迫の度合いを強めていくのではないかとも言われている。ここ数年から昨年夏までは、バブル期以来の好況で、不動産業界はどこも業績が好調であった。確かに不動産価格が右肩上がりの時は誰でも儲かる。仕入れ時よりも時間の経過と共に、物件価格が勝手に上がるからである。業者は仕入れた土地の瑕疵となる問題点を片付け、ソリューションという付加価値を眩し、それをそのまま転売するか、最有効利用となる上物(建物)を建てて、更に収益を上げる。持っているだけで時価は自然に上がって行くので、至って簡単である。わずか2年前には不動産業者の売り惜しみということさえ、言われた。先に行けば物件価格はもっと上がるので、敢えて供給を控えて、後ろに送るのである。そういうことが平然と為されていたのはつい最近のことであった。
 ところが、昨年夏のサブプライムローン問題発生以降、状況は一変したのである。銀行の不動産融資姿勢が慎重になり、物件の買い手がいなくなり、物件が一気に動かなくなってしまったのである。買い手にファイナンスが付かなくなったことが大きいが、買い手も先行き下がると見られる土地を慌てて買う必要はなくなるので、土地の需給は緩む一方である。
 不動産会社にとっては土地は自己資金と借入金で取得するのが一般的であるが、物件価格が下がって、取得資金以下でしか売却できないと損失が発生し、借入金額を下回る金額以下でしか売却できないとC/F(キャッシュフロー)上のマイナスが発生する。買い手がいない中で借入金の返済期限は無情にも確実にやってくる。無理に投げ売りすると物件価格はさらに下がっていく。数十億円以上の大きな物件を手掛ける会社ほどリスクは高く、キャッシュフローへのインパクトは大きい。だから、前期決算まで業績好調だった企業があたかも突然死(サドンデス)したかのように見えるのである。
 現在は不動産各社ともさらに物件価格は下がるとじっと待ち構えている状況であり、誰も手を出さない。その中で、金繰りの詰まった弱い会社は退場を迫られる。だから、まだ下げ基調の中での兵糧戦となっている。しかし、どこかで底値と見たら買いが入るわけであり、いつ反転があるのか。それまでに更なる不動産会社のドミノ倒しが始まるのか、不穏な状況にある。何とも嫌な空気が流れている。