神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

難しいことを易しく

macky-jun2008-04-21

 今週もスタートだ。今日は大学時代の友人W君が新しいオフィスに訪ねて来てくれた。近くの新橋亭新館という老舗の中華料理店で、昼飯を食べ、近況を語り合う。彼は最近、2冊著作を書いた。個人投資家向けの投資の本と金融・ファイナンスの入門書だ。W君は「世の中、難しいことを偉そうに難しく書く奴は多い。また、易しいことを難しく書く不届き者もいる。だけど、難しいことを易しく書ける奴はそんなにいないんだ。」と得意満面だった。入門書のあとがきに「大学生や社会人新人向けに、必要最低限の基礎知識をつけてもらうための金融入門書だ・・・」云々書いてあったけど、ざっと本を読んだ限りでは、出だしこそ「お金とは、金利とは、為替とは」と柔らかだったけど、なかなかどうして、株式・債券あり、EVAやNPV、ブラックショールズやMM理論やデリバティブや、数式もバリバリ登場するし、内容は結構手強い感じがしましたよ。W教授、それでは学生さんがあまりにも可哀そう・・てもんですよ!
 小生も大学であまり授業には出なかったとはいえ、かの名門Hゼミナールの末席に所属し金融論を専攻した身、なんとか無事卒業し、26年間も金融の第一線でこれまたなんとかひーこらやってきた人間です。一応、証券アナリストもFPの資格も取りました。小生も貴職と同じ学舎(まなびや)で「ベンチャーファイナンス論」を教えている身です。それでも、「必要最低限の金融知識」と言ってしまうのは・・・あまりにも厳しい。正直言って、今、小生がテストされたら出来ない問題が結構あるのではないかという気がしますし、まして、わが社の若手にやらせたら、どの位できるでしょうか?
 ビジネスをやるのに、経済理論や金融理論の知識が必要か?と言われると、無いよりあったほうがいいでしょう、位に思っている。確かに、経済の基本的なメカニズムを知っておくことは必須だろう。特に、金融ビジネスをやる上では必要となる。理論は知っておいた方がより幸せになれる位のものかもしれない。世の中に起きている現象が一応、理屈立って納得がいく精神安定剤のようなものだ。では、先のサブプライムローン問題がこれ程の世界経済への大きなインパクトがあると、予測できた学者はどれだけいただろうか。連鎖関係がわかっていた者がどれだけいただろうか。
 今の経済・金融の世界はあまりにも影響変数が多すぎて、かつその影響度合いが常に変動しているために、数式や理論で説明するには追いついていない、とても複雑なものになってしまった。アメリカの低所得者向けのたかが住宅ローン債権がクレジットデリバティブに組み込まれて、何倍にも膨れ上がって、世界中の投資家に売られていたり、何十倍にもレバレッジを効かせるFX投資で為替相場に影響を与えるのが日本の架空の主婦Mrs.Watanabeと言われたり、経済に与えるインパクトは金融新商品の高度化と増殖により大きく変わり続けている。また、かつて表舞台に出てこなかった、Bricsやドバイ等オイルマネーの影響力の上昇、帝国の覇権の移動等、経済やマネーの流れは常に変動している。既存の理論で説明するのはもはや難しく、どうしても理論は後追いとなり、過去に起こったことの説明に使われるに過ぎないこととなる。アラン・グリーンスパンも確かにそういう事を言っていた。彼は政策運営にあたり、あまり理論に重きを置かなかったと言われている。
 政策運営やビジネスジャッジメントにおいては、理論が説明できる部分は減っているが、学生には過去の事象を理論も含めて、大いに勉強して欲しい。W教授の言うように、難しいことをわかり易く考える癖をつけて欲しいと願う。その上で、複雑この上ない市場経済に戦いを挑んでほしい。
 ちなみに、W教授の言うように「難しいことを易しく語る」が小生ブログの追及したい理想のテーマでもあります。言うは易く、行うは難しですね。