神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

新興市場の光と影(2)

macky-jun2008-03-08

  新興市場から投資家が去って行ったのは、06/1のライブドア事件が発端となっているが、ライブドアという会社1社が悪いのではもちろんない。ある面でホリエモンは一時ではあるが、若者たちの英雄扱いされ、保守的なこの国で若手起業家という生き方があることを示した。一流大学から官公庁や大企業へという保守的思考ではなく、自ら起業していく、リスクを取っていくという米国のような思考トレンドがあの時代たしかに芽生えつつある空気は感じられた。しかし、今年の大学生就職人気企業ランキングを見ると、また一段と保守的な傾向が見られる。上位には銀行、商社、損保会社が並び、20数年前に就職した我々の頃に非常に酷似している。単に合併・統合で社名は変わったが、比較してみて欲しい。本当に笑ってしまう。
 ネット社会とか規制緩和という世の中の環境変化がベンチャー企業にチャンスを提供し、起業ブームが起こった。しかし、また若者も世の中も保守的な方向に戻ろうとしている。ホリエモンに代表される若手経営者の失敗・挫折を見ているからだろうか。ホリエモンは単に本物の企業家、経営者ではなかったということだけなのに、若者全般の気持ちが萎れてしまうのは残念でしょうがない。
 新興市場は成長企業を育成支援していく市場、優勝劣敗の激しい、新陳代謝・入れ替わりのある市場を模索していた。しかし、新興市場株に群がったデイトレーダーを中心としたネット個人投資家たち、同市場株のボラティリティーの高さに着目し、話題・イベントを見つけ、株価の上げ下げを仕掛ける。新興市場株は流動株が少なく、売買の主体もネット個人投資家だったので、ちょっとした売買でも相場が変動しやすい。彼らが新興市場を品位なき市場にした。
 新興市場に”不良企業群”は次々と姿を現し始めた。07/2に粉飾事件で破綻したアドテックスでは元暴力団組長が副社長として入り込んでいたという驚くべき実態だった。01年に公開した時点では日本IBMから分離独立した会社ということで評判を呼んだが、業績がその後悪化し、債務超過に転落。粉飾に手を染めたことがきっかけとなり、魔の手の侵入を許すこととなった。
 わざわざ深夜を選び、決算下方修正を発表する等の姑息な手段を取った企業もあった。公開後市場で数百億円を調達し、海外企業を買い漁ったが、結局それらをマネージできず、二束三文で手放し、最終損益が年間売上高に匹敵する数百億円の赤字を計上した会社もあった。この間、この会社の時価総額はピークの5,500億円から現状70億円までに約80分の1に急落した。
 新興市場株に対する投資家の不信感は増幅しており、解消する気配は一向に見えない。こうした不良企業群の出現、相次ぐ業績下方修正、コンプライアンス違反等で、証券市場入口での審査体制、基準も従来とはまったく変わり、歴然と厳しくなっている。それに追い打ちをかけるようにサブプライムローン問題の発生に伴う世界的なパラダイムシフトが起きており、信用収縮の流れが企業を締め上げようとしている。2006年には188社あった公開企業数も2007年には121社と2/3に減少し、2008年はJ-sox法施行に伴う内部管理体制強化もあり、更に激減する見込みであり、100社を切るのは確実であり、80社とか半減の60社とも言われている。暫く冬の時代が続くこととなりそうだ。
 変化はチャンスをも生むが、時にチャンスをも奪う。本来、タイミングさえ違えば公開できたであろう企業、公開をステップにさらに成長軌道に乗ることのできた企業たちのチャンスが摘み取られようとしている。機会の平等が失われつつある現状に憤ると共に、夢と希望が失われた活力のない社会になりそうなこの国の将来を危惧している。