神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

新興市場の光と影(1)

macky-jun2008-03-03

  新興市場の株価が低落しており、いっこうに立ち直る兆しが見えない。2005年末のピーク時の水準の20数%程度にまで相場は下落したのだろうか。
 少し旧聞に属する話ではあるが、昨年の6/24に東証はインターネット総研を上場廃止にした。同社は1999年12月に東証マザーズ第1号銘柄として上場した会社であり、今試練のタイミングにある新興市場で象徴的な出来事となった。子会社の不正会計が原因であるが、同社が買収した東証2部上場のIT関連企業アイ・エックス・アイ(以下、IXI)が07/1に粉飾の末に経営破綻した。同社はIXIを連結対象から外し、決算を発表したが、監査法人トーマツが適正意見を出さなかった。これが上場廃止基準に抵触した。同社は直前までSBIホールディングスとの経営統合で合意していたが、IXI破綻を受けて白紙撤回された。
 同社株式は公開後、2000/1に時価総額で1兆円まで買われたことがあるが、直近の売上高はわずか7憶25百万円で経常利益63百万円の会社であった。当時のネットバブルの極みであろう。「本体の業績は赤字なのに、何故評価されているのか?」同社のビジネスモデルを含め、よくわからない会社だった。ネット社会に対するバブルな期待を背負い、ネット関連企業を買収し続け、それら企業が公開し、グループ連結として価値が膨れ上がっていくという構図だが、実力があるのか、何が強みの源泉なのか、最後までよくわからなかった会社の一つだった。IT技術を看板に掲げていたが、結局は同社の実態はIT企業に投資を行なう金融業だった。
 小生が同社に持った印象と似た体験をした会社が、少なくとも2社はすぐに思い浮かぶ。ご存じ、ライブドアエンロンである。本業がいったい何なのか、収益を生むビジネスモデルの構造がどうなっているのか、はたして社会的に意味のある存在意義のある会社なのかどうか、何故市場で評価されているのか、が全く分からなかった。
 小生はベンチャーキャピタリストの端くれとして、第一印象のピンと来ない、すなわち初見で分かりにくい会社への投資は行わないのを主義としている。業界事情等をじっくり勉強して、その結果ようやくビジネスモデルが理解できて・・・という会社に投資をして、うまく行ったためしはない。どうしても時間をかけて調べると分かった気になってしまって、ついには投資をしたくなってしまうのは悪い癖である。
 直感で判断するというと、如何にも乱暴なような気がするが、そうではない。ビジネスモデルが分かりやすいということは伸びる会社に必要な要件の一つである。投資家にわかりやすい、銀行に説明しやすい、お客さんに商品(サービス)がわかりやすい、販売をする営業社員や卸問屋や代理店にわかりやすい。会社にかかわる全てのステークホルダーにわかりやすいということは、潤滑にビジネスを進めていく、順調に業績を伸ばしていく上で重要である。わかりにくいことがあると、必ずどこかで滞りが生じるものである。スーッと頭に入っていく感覚、それを企業判断のうえでは大事にしたいと思っている。