神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

アラン・グリーンスパン

macky-jun2008-02-02

 アラン・グリーンスパンの「私の履歴書」(日経新聞)が先日終わった。毎日、楽しみに読んでいた。同氏の自伝書「波乱の時代」の抜粋だ。さすがに米国FRBの名議長として、1887〜2006年までの18年間も世界経済の舵取りをしてきた人物で、気負いがなく実力を持った人の文章だった。一味違うかなとの風格を感じた。 
 最後の回の気に入ったフレーズ「世界の将来も楽観している。文明を前進させるイノベーションを事前に予測することは誰にもできない。しかし、常に必ず起きてきた。それは人間の本性に根ざしているものなんだと思う。逆境に耐え、現実に適応していく能力は人間に備わっている。だからこそ人類は前に進んできた。」ピーター・ドラッカー的な人類に対するPositiveな信頼感を感じさせる。
 エコノミストとして統計・データを実証的に検証し、政策決定していくという実務家的手法を重視し、共和党員でありながら、時には同党の政策に反論したり、勇気ある発言をしてきた。また、経済理論をあまり信用しなかった。世界経済はあまりにもグローバル化し、複雑化しすぎたので通用しないとの理由からで、極めて現実的な対応をしていく司令官だった。その洞察力でブラックマンデーやアジア・ロシア通貨危機を乗り切ってきた。金融政策のマエストロ(巨匠)とも呼ばれた。
 若い頃ジュリアード音楽院に通い、プロのJazz Sax奏者を目指したが、1歳下のスタン・ゲッツの才能には敵わないと諦めた話や、NBC記者だった現夫人のアンドレア・ミッチェルとの恋愛話など、ウィットに富んでおり、親しみやすかった。人間としての余裕を感じさせた。
 小生の昔の話で恐縮ではあるが、ドイツ連銀の名総裁と言われたペール氏が来日し、当時のK頭取の命により日銀にお迎えにあがり、ホテルオークラまでお送りしたことがあった。若造がペール元総裁の隣に座る光栄に浴したが、緊張する私を極めて柔らかい自然な空気で付き合ってくれたのがとても印象的だった。本当に偉大な人物は威圧感を感じさせない、決して偉そうではない、普通の気さくなおじさんだった。前川レポートで有名な元日銀総裁の前川氏とは本当に気が合ったようでゴルフ友達だと言っていた。ちょうど、彼が総裁辞任後、顧問に就任したSahl Oppennheimというドイツの証券会社に小生は数年前トレイニーとして派遣されたことがあったというLuckyもあり、話が弾んだ。
 本当の実力者は自分に余裕があるから、鎧を纏う必要がなく、親しみやすい人が多い。グリーンスパン氏もそのような人物であったことが文章からは想像される。