神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

日本衰退論への疑問

macky-jun2008-01-26

  昨日の日経新聞「大機小機」に載った<バブルと国力の混同を憂う>というコラムが極めて小気味よかった。日本の国力低下を嘆く議論が盛んになっており、例えば一人当たり名目GDPの順位が10年前には3位だったのが2006年には18位に後退した。また、名目GDPの世界に占めるシェアでみると確かにピークの94年に比較して2006年は半減しており、日本は9.1%に低下している。これは高成長を続けるBrics新興国が猛追しているからである。これらに象徴されるようないろいろな国際比較の中で発生している”日本衰退論”がある。
 筆者は「本当だろうか」とズバッと疑問を呈する。比較があくまでもドルベース換算でなされるからで、円高ピークの95年当時のドル表示の購買力平価で約50%過大評価されていた円が、現在の実力に見合わない円安で20%程度の過小評価されているが故の順位変動であるとバシッと結論づける。最高位の頃、ドルベースでは世界最高水準の所得になったけど、「物価も高く、労働時間も長く、豊かさを実感できない」というのが国民の本音であった。
 日本はこの間”失われた10年”ではなく、物価・地価・賃金の内外価格差を解消すべく、構造改革と超低金利政策で解消し、努力をしてきた、という論調である。確かに93年には最高位の2位となり、国際比較が可能となった80年以降では18位は最低順位かもしれないが、購買力平価並みなら日本は今も10位以内だし、そもそも80年前半は11〜17位が定位置だった。
 一方でこの間、順位を上げて”国力を高めた”と言われるのは北欧の小国と米国(10→7位)、英国(18→11位)である。英国躍進の理由はポンド高であるが、Londonの物価はかっての東京を思わせる程、住宅価格もホテル宿泊費も高い。金融のビジネスモデルもサブプライム問題で大きく揺らいでいる。日本の土地本位バブルに対し、アングロサクソンの市場金融バブルが弾けた。
 為替相場はある意味で国の経済力を表す指標とも言われる。しかし、人為的・政策的に決められることも多い。かってのプラザ合意しかりである。その時々の国の課題を果たす過程で為替相場は大きく変動もしうる。他国それぞれの状況があり、政策課題も違い、安易な順位比較にはそれほどの意味はない。ドルベースで換算した順位で一喜一憂して、妙に悲観的になり、自信を失ってしまう空気が蔓延してしまうことをむしろ危惧したい。
 我々個人においても安易な順位比較にはあまり意味はない。その時々にやるべき課題を着実に果たしていき、個人個人が充実した生活設計をしていくことで、その総和である、国としての充実というものが成されるように思っている。