神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

ドラクロワが我が家に

macky-jun2013-03-02

 久し振りに版画を購入した。フランスのミッシェル・ドラクロワの「横断歩道」というシルクスクリーンで制作されたものだ。この画家は昔のパリの街を抒情的に描く、暖かい作品が特徴的だ。時代はいつ頃だろうか。第2次大戦以前だろうか?それともすぐ戦後だろうか?現代の人達とは明らかに服装も街並みも違っている。描かれた人物がそれぞれ味のある表情やしぐさをしている。
 2000年に家を買い、引っ越してきた時にリトグラフを4枚購入した。その内、2枚がジャック・デぺルトのゴルフ場の作品だ。俺の趣味で買ったこのデぺルトの額縁が黒と金縁であるのが、「部屋が暗くなる。縁起でもない。」と妻は気に入らなかった。久々にリビングを模様替えするかということになり、少し明るい版画を買おうということになった。
 前から好きだったヒロ・ヤマガタか、D証券のMくんから頂いた今年のカレンダーでお馴染のミッシェル・ドラクロワかが候補だった。ドイツの古い街並みを超明るくユーモラスに(バカっぽく)描いたヤマガタの「カッセル」とドラクロワのパリのしっとりとした街並み。ネットで見て気に入ったギャラリーを土曜日に訪ねてみることにした。
 そこは大森駅から住宅地の中にある小さな倉庫のようなギャラリーだった。ネット販売中心にやっているが、訪ねて行けば現物を見れるということだったので、妻と午後に行った。突然の訪問に代表のMさんは戸惑ったようだが、直ぐに打ち解け、面白い話をいっぱい聞かせてくれた。
 Mさんは私より歳は2つ下、若い頃、画家を志したようだが、31年前には画商として商売を一人で始めた。当初は卸し販売を中心にやっていたが、バブルが弾け、1997年にネット販売を始め、小売中心にビジネスを切り替えた。バブル時は百貨店などが催事場で行なう展示即売会に100点を貸すと、20点は売れた。それが数点しか売れなくなり、おまけに1〜2割は額縁を破損して還ってくるから、採算が合わなくなった。不動産や株式と一緒で、相場が下がり局面になると仕入れ値を下回り、含み損が拡大する。絵画の売買も需給で価格が決まるから、下がり局面では誰も買わなくなるからどんどん価格は下がる。
 バブルでは相当な損害を被ったようだが、親しく付き合っていた取引相手に取り込み詐欺に遭ったり、相当なダメージを喰らう。それでもビジネスモデルを機敏に変更し、今日まで30年以上頑張ってきた。次の波が2008年のリーマンショックだった。都心にあったギャラリーを閉め、倉庫として借りていた大森に拠点を移した。その倉庫のようなギャラリーでMさんはただ一人で忙しそうに働いていた。PCを置いた机の壁には御嬢さんの写真が貼ってあった。
 在庫が常時1000点以上あり、月に100点程の売買があるようだ。昨年12月からここ2カ月で絵画の相場が急騰しているという。こんなことは1990年のバブル崩壊以来だと言っていた。アベノミクスでの景気回復は本当なのか、またバブルの再来なのか。長いこと待ち疲れた個人金融資産が動きだしたのか。
 ドラクロワの絵画は3割も上がった。草間弥生は4倍の600万円にもなった作品があるようだ。これは投機目的だろう。しかし、ヒロ・ヤマガタは専門に扱っていたネイチャーボーイ社が98年に倒産し、1万点の作品が市場に掃き出されたので、価格は暴落。バブル時に100万円超もしていた作品が1/10以下になっている。12月以降も価格は動かない。
 今回、久々にネット検索をし、ヤマガタ作品が安くなっているのに驚いていた。当時、池袋サンシャインの展示会でJ・二クラウスとのWサイン入りのマスターズ作品が120万円で販売していた。分割で如何ですか?と若い売り子のオネエちゃんに勧誘され、少しだけ心が傾いた。それが今や1/10以下で買えるのだ。当時金が無くて、つくづく良かったとホッとした。
 この日、ドラクロワを3点見せて頂き、妻も私も気に入った「横断歩道」を購入することにした。翌日午前中に早くも宅急便で届けられた。さっそく飾ったドラクロワは不思議な温かみを持った絵で癒してくれる。「虫食い」というアンティークな茶色と金縁の額縁がリビングの雰囲気をさっそく変えたようだ。