神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

「MBOフォーラム」に(続) 

macky-jun2011-06-25

  暑い日が続いている。昨日は熊谷市で39.8℃と6月の観測史上最高気温を記録したらしい。いつの間にか窓を開けて寝るようになった。寝苦しい夜が続く。しかし、今朝起きたら日差しは強いのだが、風が爽やかでサラッとして心地よかった。ハワイのような気候だと、気分がよくなった。リゾートにいるような気分で机のPCに向かっている。つくづく単純なものである。
 さて昨日の続きで、MBOの話をしよう。MBOとは自分が経営する会社を自ら買収することである。MBOによって所有と経営の一体化による原点回帰を果たすことであり、「第二の創業」であるという。日本の上場企業の内、売上が横這いか減少している企業は75%もある。そうした成長が止まった企業が上場を継続するのは問題である。企業の目的が企業価値の拡大であるならば、市場を出入りすることはあり、IPOMBOも手段である。MBOは目的ではなく、その悩みを解決する手段である。
 佐山氏・笹山氏の話はMBOを商売の種としている立場から、極めて肯定的であり、この日の講演も自社の宣伝活動の一環であろう。次に話をした森・濱田松本法律事務所の3人の弁護士先生たちからは、MBOに関わる実務的問題の話が聴けた。MBOの構造的利益相反問題、TOBスクイーズアウト(少数株主からの株式買取)での実務手続き、MBO株価の決定、MBOの紛争事例(サイバード、レックスHD、サンスター)等であった。最後にパネルディスカッションがあったが、それぞれの立場から意見を言っており、対立的な議論はなかった。
  しかし、MBOに関してはいろいろな批判があることも事実である。東証の斉藤社長発言に代表される「株主がうるさくなると上場廃止に走るのは、個人的に非常に不快。投資家を愚弄している」「資本市場のいいところだけ取った食い逃げか」との批判もわかろう。経営者はIPOで創業者利潤を得て、上場後に株価が冴えなくなると、安くなった株価で買い取り、数年後に再上場したらまた売却益を得ることが可能なのである。IPOMBOを行き来することで、2度3度と美味しい思いをできるのである。一方で市場で株を買った長期投資家はMBOで売却損を余儀なくされることも多い。
 基本的には経営者と投資家では「情報の非対称性(経営者のみ知っている重要情報があること)」があるので、不平等である。トラブルになるのは常に株価の問題であり、経営者が情報公開をきっちりとやることが必須である。そのMBO大義があるのか。よく見極めるべきである。
 MBOが盛り上がっている背景としては、金融機関(銀行、証券会社)やMBOファンドや法律事務所などのMBO関係者の動きが指摘される。新規上場が大幅に減少し、証券会社は企業にMBOを持ち込み、非上場化の手数料ビジネスを狙っている。銀行からは非上場化でシニアローンが出るので、またとない融資対象となる。しかも通常ファイナンスに比べ、金利が高く利鞘に旨味がある。ファンドにとってはエクイティーを取り、IPOもしくは転売でのキャピタルゲインが望める。IPO市場が凋み、景気が冴えない環境では、MBOは数少ないビジネスチャンスとなっているのである。
 物事には表もあれば裏もある。真実には常に二面性があるのかもしれない。「誰かの満足は誰かの落胆」という利益相反的な要素がMBOにはつきまとうようだ。