神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

「Research Design」とは 

macky-jun2011-06-04

「Research Method」の授業に出席する。論文の書き方についての授業であるが、そもそもこれまで論文の書き方を習ったこともなければ、基本的なルールさえ知らなかった。そんな私に友人のW君がS教授の講義を教えてくれた。博士課程に在籍する2名のクラスに飛び入りさせてもらった。
 S教授はハーバード大に留学し、ケンブリッジで博士号を取った海外派の方で経営学の教授であるが、「Research Method」をライフワークにされているようだ。日本ではこうしたことを教えておられるのはかなり稀なことらしい。
 そもそも日本の大学教育の水準は低く、教員の質がアジアでも最低レベルであると冒頭言われた。というのも香港、シンガポール、マレーシアは英国の植民地であったこともあり、教育も英国式である。中国、韓国は米国・英国・カナダに留学して教育を受けている。英語での教育というのがグローバルスタンダードになっている。Phdのみ教員になれるのが常識だが、日本はそうなっていない。他国では常識となっている考え方が日本でのみ違っている。
 だから、博士論文の内容と質が他国とは全く違っている。論文というのは科学哲学(Philosophy of Science)の世界であり、全ての学問は哲学から始まる。例えば、Inquiry(質問、問い)というものがAdvocacy(提言・提案)的質問、Evaluation(評価)的質問、Compare&Contact(比較・対比)的質問とあるのが、英国流である。Inquiryが出発点となり、問題を定義できれば半分終わったのも同じである。先行研究を調べるのも大事である。時間は有限であるから、過去の調査を調べる。そこに何らかの付加価値を与えることが出来て、その調査の価値が決まる。
 授業はこの日から「Research Design」(John W.Creswell著)という本の輪読が始まった。第1章のFramework of Designで、論文設計の概念枠組みについて教えていただいた。1.その研究を特徴づけているのは、どんな認識論(理論的Perspectiveに埋め込まれている知識の理論)なのか(客観主義なのか主観主義なのか)、2.問い(Inquiry)を巡る方法論の背後で働いている理論上のPerspectiveは何か(実証主義、ポスト実証主義、解釈主義、批判理論など)、3.研究方法論は何か(具体的な方法を選ぶ際の戦略・計画)。
 哲学的な立場が一貫していないとおかしいと言われる。一日経って、ノートを読み返してみると、その場ではわかったつもりになったことが随分とあやふやだとわかった。授業はとても哲学的な授業であった。知の哲人ソクラテス以来、西洋の学問は哲学から成り立っている。こうした教育を受けてきた世界のビジネスエリートは全て哲学を勉強している。すなわち彼らの考え方は哲学的論理から成り立っており、時に日本人が議論をして歯が立たないのも、こうした知的バックボーンの違いかとも思った。哲学をまた勉強し直したいと思っていたところでもあり、とても嬉しい授業であった。