神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

学会初参加

macky-jun2011-05-29

  昨日、日本金融学会の春季大会に出席した。場所は明治大学駿河台キャンパス(リバティータワー)。友人W君の薦めで今年から日本金融学会と証券経済学会に加入したのだった。日本金融学会は5/28、29の土日に行われる。初日、私は朝10時から参加した。午前中、分野ごとに5つのセッション(金融史、グローバル・クライシスと金融政策、為替レート、金融機関・金融システム、コーポレートファイナンスファイナンス)が行われる。私はコーポレートファイナンスファイナンスのセッションに参加した。3人の報告者が各45分ずつ、報告と質疑応答を行なう。
 学会に出たのは初めてのことだったが、報告者が時間をかけて研究したであろうテーマをPower Pointのレジュメに従って、論文の流れで発表する。「株式分割バブルとライブドアショック」「2008年金融危機時に銀行離れした企業への銀行の貸出対応」「IPO企業の調達資金の使途に関する研究」であった。私の研究ジャンルであるIPOに関わるテーマも2つあり、興味深く聴講した。どれも統計データを使った実証分析が多い。報告者はフロア(出席者のこと)からのシビアーな質問にも答えなければならない。
 昼は駿河台にある近くのカレー屋「エチオピア」で辛さ3倍のシュリンプカレーを食べる。学生街で食べるランチは格別美味しかった。午後は13:30からやはりファイナンスのセッションを選び、聴講する。「金融危機と日米中株式市場のボラティリティ分析」「銀行のポートフォリオ選択行動」「消費者金融のイベントスタディ分析」であった。
 6つも続けてプレゼンを聞いて、それぞれ巧拙あったが、感じたことを列挙したい。テーマ選択のセンスのよさが大事であり、面白さにつながること。先行研究の事例を国内のみならず海外までも調べあげ、これまでにない新規性がどこにあり、研究価値があることをアピールすること。どれも標本データを集め、統計処理して仮説の検証をしていること。時に有意な結果が出ずにつまらない結論になっていること。専門用語、特に統計分析用語が多用され、わかりにくかったこと。そして実務をやっている立場からは、この研究がどういった形で実務に生かされていくのか、社会的意味が果たしてある研究なのかといった疑問を持った。
 学者の行なう研究はどうしても過去事例の統計分析が主となり、後追いとなるのはやむを得ないことである。統計データを使うことで実証をするのだが、前提条件の置き方、データの取り方次第で如何様にも結論が変わってしまう。研究者はこの統計処理に多大な時間をとられ、本来の価値あるテーマの選択センス、調査の社会的意義を考える時間があまりなかったのではとも思えてしまう。もしくはビジネスを知らないがために机上の空論になっていないかだ。しかし、学会初体験でいい知的刺激を受け、得る部分は多かった。学者の世界という一種独特の世界を知ることができた。実務社会にいる立場で発信できる有用な研究とは果たして何なのだろうか、という素朴な原点にまた戻るのだった。
 この日は最後に日銀総裁白川方明氏の講演があった。「通貨、国債中央銀行−信認の相互依存性−」というタイトルで、「信認」が大事であるということを終始強く主張されていた。中央銀行総裁としての強い自負を感じた。最後に二人の質問者がいたが、一人は母校でサブゼミでお世話になった先輩のO教授だった。終わってから挨拶に行ったが、現在は母校大学の副学長になられていた。現在、この学会での重鎮であるし、将来、会長にもなられる方であろう。終わってから、W君と茶店に入り、暫し論文指導を受けた。とても知的刺激のあった一日でした。