神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

研究の世界を覗いてみる

macky-jun2011-05-05

  連休後半、この3日間陽気は好かったが、ずっと家の書斎に籠って、論文を書こうと思い、机に向かっていた。友人の教授W君が丁寧に指導をしてくれ、いろいろと読んだ方がいい書籍や参考論文を紹介してくれる。これをAmazonから取り寄せたり、ネット検索をして、専ら読んでいた。まさに学究の生活である。
 私の専攻は「ベンチャーファイナンス」、それに関わる新興市場ベンチャーキャピタル(VC)、ベンチャー企業の行動がテーマとなる。日頃、仕事でその世界に身を置いている訳だが、それを理論的に解明していくのが学者の仕事となる。
 既存の論文にはある潮流があるように思う。流行、トレンドのようなものだろうか。IPO市場だけとってみても、IPO後の業績低迷の原因、IPO時のアンダープライシングについて、IPO後の中長期アンダーパフォーマンスについて、調べたものが主流となっている。VCの研究としては、段階的(マイルストーン)投資とシンジケーション、ロックアップ契約のアンダープライシングへの影響などである。それらに多くの仮説が内外ともにあるようだ。そして先行研究を追いかけるように、次々と別の学者が隙間を埋め、これまでと違うアプローチを試みる。
 ここ数日間、論文を読み込んだ感想として、学者というのは実に精緻に地道な作業を行なっている点に畏敬の念を覚えた。仮説をあげて、それをサンプルデータやアンケート調査をもとに実証分析を行なっている。自分にこれだけの集中した作業ができるだろうか。ただでさえ本業を抱え、大半の時間は取られてしまい、集中した思考は中断してしまう。
 また、既存論文を読んでいて感じたのは、ここ数年の新興市場の凋落により、かつて主流となった研究テーマがもはや意味を為さなくなっているように思った。初値が公募価格を上回るのが当たり前だった2005〜6年に比べ、下回ることも珍しくなくなった現在では、IPO時のアンダープライシング問題の研究は意味を為さない。市場の変動やイベント(事件)によって世界は変わっていく。
 自分がやりたいと思っていたのはこういうものだろうか。学者の研究と同じテーマを二足の草鞋の実務家が追いかけても、あまり意味は無かろう。むしろ、間違っていよう。現場を知っている(筈の)実務家である私が追いかけるのに相応しいテーマは何であろうか。時間もエネルギーも相当量投入するのであれば、それなりに意義のあることをしたいと思う。学術論文がどんなものなのか、研究の潮流がどんなものなのか、その一端を垣間見ることができたのはこの連休の成果である。研究の世界は深淵なものであろう。自分の知らない所でひっそりと地道に取り組んでいる人々がいることに、静かな感動を覚えたのだった。
 写真は文面と関係なく、先般訪ねた廃校跡です。