神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

「遥かな町へ」熟読

macky-jun2010-08-20

  昨晩はジムに寄ってきたので、ブログは書かずに寝ようと思っていた。酒を飲みながら、先般買った谷口ジロー遥かな町へ」を読みだした。読み進むにつれ惹き込まれていった。止めることが出来ず、結局、最後まで読んでしまったのだが、既に1:40AMだった。谷口ジロー特有の情感を表現する絵の雰囲気をしっかり味わいつつ、ゆっくりと読んでいった。
 この時期、夏のぽっかりとのんびりした時間に読みたくなるのであろうか、昨年もこの作品についてブログに書いたのが8/24であった。ちょうど丸一年、ようやく待望の本を入手できた。あらすじは48歳の心のままで、14歳の中学生にタイムスリップしてしまうという話である。詳しくは昨年の私のブログを読んでほしい。http://d.hatena.ne.jp/macky-jun/20090824/1251124709 
 心と頭脳は大人のままで、体だけが若くて軽い。まさに理想の状況であろう。だから、勉強も体育も見違えるようによく出来てしまい、同級生を驚かせる。特に仕事でも使う英語はお手のものである。授業ではボーっとしていても質問にはちゃんと答えられる。周囲も主人公を優等生と認めだす。挑発してくる奴との喧嘩にも負けない。まだデビューしていないアントニオ猪木コブラツイストをかけて、やっつけてしまう。話をしたこともなかった憧れの君にも惚れられる。自分の娘ほどの歳の彼女に恋をしてしまう。
 まさにそうありたかった理想の学生時代をやり直すということだ。こんな妄想の世界は楽しい。しかし、過去を変えると現実の世界はどうなってしまうのだろうか。結局、主人公の世界は変わらず、現在の世界に戻っていく。家を出て行ってしまった父親を止めることもできなかった。ガールフレンド長瀬智子との別れに後ろ髪を引かれつつも、自宅に帰り、妻と子供たちに再会しほっとした顔をする。自分自身が現実の家庭から逃げていたことに気づくのだった。
 主人公がタイムスリップしてしまった経験は”邯鄲の夢”であったのだろうか。母の墓前で気を失い、倒れている間に見た夢こそが、今まで心にひっかかっていた父の失踪の真相、母は幸せだったのだろうかという思い・・・心の奥底にしまいこんでいたものへの回答であったのだろう。世の中に不思議なことは起るものである。その偶然を必然と思いながら、現実の日々を一生懸命生きていくのが大事なのだろう。谷口ジローがこの作品で主張したかったのは、人生はその時々の決断で変わるが、過去には戻れない。今の自分をどう生きるかが大事なんだ。過去は変えられないが、未来は変えることができる。そういう事を言いたかったのではないだろうか。