誕生日だ！

　 今日、52歳の誕生日を迎えた。
　50歳になった時のような派手な祝われ方はさすがになかったが、皆何故だか早く帰ってきて、珍しく7時には集まったのだ。どうやら俺の誕生日ということで、用事も入れず、早く帰ってきたようだった。
　妻が保育園のバイトの帰りに、春日の魚屋「鯛助」に寄って、俺の大好物の刺身を買ってきてくれた。ささやかだけど、こうして家族みんなで食卓を囲むのも、今年が最後だ。来年というか、3月には我が娘はこの家を出ていくことになるだろう。そうすれば、もうこの家で一緒に暮らすことは二度とないかもしれない。胸が締め付けられる思いではあるが、独立するということはそういうことだ。
　笑って送ってやらねばならないのだろう。思えば、娘は昔から独立心が強かった。初めて、スキー場に行ったまだ1歳の時、エッジのないプラスチック製のパンダスキーを抱え、前をじっと見据え、ゲレンデに一人でサッサと歩いて行ってしまった。我が家では今でも語り草だ。
　一方、我が息子は一向にこの家を出ていく様子がない。自分の部屋や屋上の庭園が快適な空間のようだ。気持ちが好過ぎて、出ていく理由が無いようだ。何かきっかけが無いと、なかなか独立は出来ないのかもしれない。
　さて、我が身を振り返れば、23歳で社会人となり、初めての赴任地が新潟になったことから、自宅を出て、否が応でも独立を余儀なくされた。といっても独身寮に入って、寮のおじさんおばさんにとてもよくしてもらったので、あまり独立したという気持ちは薄かったかもしれない。52歳の今年、自分にとっては人生の転機となる年かもしれない。