神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

アヘン戦争のブロンズ像

macky-jun2009-03-02

  今日のニュースの中で、見逃せない記事があった。19世紀に英仏軍のアヘン戦争に伴う侵攻で、清朝離宮円明園」から略奪された十二支に因んだ2つのブロンズ像(ネズミとウサギの頭部像)があった。それが、2/25にパリのオークションにかけられ、落札したのが中国人だった。ただ、記者会見では「落札した金を支払うつもりはない」と、支払いを拒否する考えを示しているらしい。
 フランスのデザイナー・故イブ・サンローラン氏の遺品であり、中国は返還を求めていたらしいが、オークションにかけられ、計3140万ユーロ(約39億円)で落札されたらしい。ちなみに、故イブ・サンローラン氏の遺品は500億円近くにもなるらしい。
 この話を聞いて、とても根深いものを感じた。20代の頃、ドイツに滞在する機会があり、欧州の代表的な博物館・美術館を巡って歩いたことがある。東ドイツベルガモン博物館、パリのルーブル美術館、ロンドンの大英博物館等である。これらには、18〜19世紀にかけて、ナポレオンを始め、各国の勇士が戦利品として持ち帰った、歴史的な遺跡や遺品の数々があった。率直な気持ちとして、メソポタミアの遺跡がなんで、べルガモンにあるんだ?と思った。同様に、エジプトにあったロゼッタストーンが何故ロンドンにあるんだ?と、憤りにも似た気持ちで思った。パリのオベリスクも同じである。
 これらを持ち帰った戦勝国側の言い分は、「我々が持ち帰ったお蔭で、未だに無事保存されている」である。果たしてそうだろうか?それ以前も、歴史の風雪に耐え、1000〜2000年も生き抜いてきた。確かに、タリバンの無残な攻撃で破壊されてしまった、バーミアンの大仏像の悲劇もある。だけど、英仏独列強のやったことは略奪以外の何ものでもないのではないだろうか。戦争ならば、何でも許されるのだろうか?相手国の宝物を持ち去る権利があるのだろうか?これは盗人と何ら代わらない行為ではないだろうか。これら欧州の博物館・美術館を訪ねる度に、こうした遺産を堂々と自国の宝物として飾っている感性に、耐えがたいものを感じるのは私のみであろうか。
 本件はイブ・サンローラン氏という個人に回ってしまったので、問題は複雑であるが、国家であれば他国に対し、返還するのが礼儀ではないだろうか。幸いなことに、日本は興福寺の「阿修羅像」も他国に奪われることはなかった。アメリカ合衆国の占領ではそういったことがなかったのが幸いか。上野の国立博物館で「阿修羅像」が3月末に公開される。